更新日:2024年3月1日

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No.543「後悔、そして…」

わたしは、母と娘の三世代で同居をしています。その娘が結婚を考えている相手を家に連れて来たときのことです。母も同席し、終始、和やかに談笑しながら、楽しい時間を過ごしました。しかし、娘の相手が帰った後、母はわたしにそっと言うのです。「とてもいい子だね。でも、念のために詳しい出身地を調べておいたら」と。

わたしはもやもやしながら「どうして?」と聞き返すと、母は「ほら、孫のためだから…」と伏し目がちに言うのでした。わたしは母に、本人に責任のない「生まれ」で差別することがいかに恥ずべきことなのか気づいてほしいと思い、今でも後悔している小学生のころの出来事を話すことにしたのです。

それは、新しくできた友だちをわたしが家に連れて来たときのことでした。母はうれしそうにその友だちに「家はどこなの?」と尋ねたので、友だちが答えると、母は「そう」とだけ言い、その場を離れていったのです。そして、その友だちが帰った後、母がわたしに「あの子と遊ぶのは…」と言ったことで、その子に対するマイナスイメージが植え付けられ、その子を避けるようになったのです。

あれから自分なりに差別について学んでいく中で、決して許されないことをしてしまったと悔いる気持ちがずっと残り続けていました。その想いを母に伝えようとわたしは「母さん。今でも疎遠になった子のことを考えると後悔してもしきれない。できるなら、あのときに戻ってやり直したい。だから娘には同じ想いをさせたくないの。本当の意味で『孫のため』になることを考えていこうよ」と話すと、母は静かに目を閉じながら聞いていました。

今日は娘の結婚式。うれしそうに孫の姿を見ている母の笑顔を眺めながら、そして何より、幸せそうな娘を見つめながら、わたしは、差別の連鎖を次の世代に引き継がないと心に誓うのでした。ナビー

 

結婚などの人生の節目で差別の芽が現れることがあります。わたしたち一人ひとりが差別心と向き合い、部落差別をはじめあらゆる差別の解消に取り組んでいくことが大切です。

お問い合わせ

教育委員会事務局教育部人権・同和教育課 

電話番号:(097)537-5651

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