更新日:2020年10月15日

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No.503「ふるさと」

わたしの部署に、加藤さん(仮名)の配属が決まりました。
事前打ち合わせの中で、同じ県の出身であることが分かり、「わたしは○○市だけど、加藤さんはどこ?」と尋ねると、「隣の△△市です。近いですね」とさらりと答えたのです。それを聞いて、ドキッとしたわたしは「公害病が発生した所よね…。わたしは、小学生の時から何度も学んでいるから、避けることはないけれど、そうじゃない人もいるかもしれないわよ。だから、あまり言わない方がいいんじゃないの」と伝えました。
次の日の朝礼で、最初に異動者の自己紹介があり、加藤さんはためらうことなく出身地を言ったのです。数人がコソコソと話し始め、上司が「そこのことは知っているよ」と言ったのです。わたしが「やっぱり…。だから、言わない方が…」と思った時でした。上司は「偏見や差別があって、患者や住人を誹謗中傷するようなことが今も起きているんだってね。加藤さんも、つらい思いをしたことがあるんじゃないの?」と尋ねたのです。加藤さんは「嫌な思いをしたことがあります。だから、出身地は言わない方がいいと思っていた時期がありました」と答えました。そして、「でも、わたしよりもっとつらい思いをしている人がたくさんいるんです。だから、差別を少しでもなくすためには、事実や自分の思いを話すことが必要だと考えました。いろいろな見方がありますが、わたしの大切なふるさとですから」と加藤さんは力強く続けたのでした。上司が「やはり、多くの人が苦しんでいる現実があるんだな…。これは、あなただけではなく、わたしたちの問題なんだよ」と言うと、その場にいたみんなもうなずいていました。
加藤さんや上司の話を聞きながら、思いやりや優しさのつもりだったわたしの言動は、本当に加藤さんのためだったのかと考えさせられました。

zuutan
本来、出身地などについて誰もが誇りを持って話せる世の中であるべきなのですが、偏見や差別により、それができにくい現実があります。わたしたち一人一人が、自分らしく生活していくためには、差別のない社会の実現が必要なのです。
 

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教育委員会事務局教育部人権・同和教育課 

電話番号:(097)537-5651

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