ホーム > くらし・手続き > 人権・同和問題 > 人権教育 > 人権・同和教育シリーズ > No.485「近くにいても…」
更新日:2019年4月15日
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先日、幼なじみのサチ(仮名)と一緒にご飯を食べた時のことです。
その日のサチはいつもと様子が違ったので、「何かあったの?」と尋ねると、黙って下を向きました。「友だちなんだから何でも話してよ」と言うと、しばらくして「実はわたし恋人ができたの」と切り出しました。うれしくなり「良かったね。それでどんな彼氏なの?」と尋ねると、「男性じゃなくて、女性なの。わたしの恋愛対象は女性なの…」と言ったのです。性の在り方はさまざまであるということを聞いたことはありましたが、わたしの周りで…、ましてや幼なじみのサチが…。わたしは動揺しながら、「そうなんだ。でもわたしはそんなの気にしないよ」と声を掛けたのです。それでも、サチは下を向いたままでした。何か気まずいままその日は別れたのです。
その日以降、ずっとサチの表情が気になっていたので、思い切ってまた食事に誘いました。
「あまり話ができていなかったし、ずっと気になって…」と尋ねると、サチはわたしを見て話し始めました。「あの時、驚かれるとは思っていたけど、あなたが『そんなの気にしない』と言ってくれてうれしかった。でも、関心がないようにも聞こえて寂しくなって…。これまで誰にも言えなかったけど、あなたにだけは知っていてほしくて、気持ちを分かってほしくて。だからもっと話をしたかった…。わたしのことを気に掛けてくれてありがとう」と笑顔で言ったのです。
一番言いたいことが一番言えない、話したらどのように思われるだろう…、と一人で悩んでいたに違いありません。長い間そんな辛い思いをしていたと思うと胸が苦しくなり涙があふれてきました。わたしは近くにいて分かっていたつもりなのに分かっていませんでした。こんなわたしに本音を打ち明けてくれたサチに対して「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。
一番伝えたいことが一番言えない背景には何があるのでしょうか。周囲に偏見や差別があるからではないでしょうか。身近なところから考えてみませんか。