更新日:2020年11月16日

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No.504「一つの姿だけで…」

 今年の三月に教員を定年退職しました。最近になって、教え子がお祝いの会をリモートで開催してくれ、ヒロキさん(仮名)に久しぶりに会いました。この子を見るとわたしの教員としての転機を思い出すのです。
ヒロキさんとの出会いは、教員という仕事に慣れて自信を持ち始めた5年目のことでした。第一印象は、明るく人懐こい子でした。しかし、たびたび授業中に寝たり、忘れ物をしたりと、次第に気になることが見え始めました。しっかりして欲しいという思いから厳しく指導しましたが、何も変わらないのです。わたしの中で「困った子」との思いがだんだん強くなり、心の距離を感じるようになっていきました。
ある朝、教室に行くと、ヒロキさんがいません。欠席連絡はなく、電話をしても出ません。心配になったわたしは、すぐに家を訪ねました。ヒロキさんが出てきたのですが、元気な様子です。「どうしたの?」と尋ねると、黙っています。何をしていたのか聞くと「洗濯…」とだけ言うのです。「おうちの人は?」と尋ねると「仕事…」と答えるのです。さらにゆっくりと話を聞いていくと、おうちの人の帰りが遅くすごく疲れている様子であること、朝のうちに自分にできることを何かしておこうと思って洗濯をしたことなどを、ぽつりぽつりと話しました。その言葉から家庭での様子やヒロキさんの思いが伝わってきました。ヒロキさんは自分なりにいろいろと悩み、考えていたのです。日ごろの様子からは想像することができませんでした。
この出来事によって、学校での姿で決め付け、子どもの思いを知ろうとせず自分の教育観を押し付けるように子どもに接していたことに気付かされました。それからはヒロキさんの思いをしっかり聴くことを心掛けていくと、学校での姿が少しずつ変わっていきました。子どもとの関わりで大切なものは何かを振り返るきっかけとなったのです。


nabi
人の一面だけを見て判断し、偏見を抱いたことはありませんか。相手の背景を知ることで、その人の本当の姿が見えてきます。このように背景を見ることを大切にしてきたのが人権・同和教育なのです。

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