更新日:2026年3月24日
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会社の同期たちと研修を受けていた日のことです。昼休憩に同僚のカオリ(仮名)とランチにバタバタとお店に向かうと、満席で入れませんでした。そこで、近くのベーカリーに行くことにしました。「ここも混んでるね」とカオリと顔を見合わせながらも、トングとトレイを取り並びました。
時間が気になりはじめ前の方を見ると、片手にトングを持ったまま、もたついてる様子の人がいたのです。わたしは思わずカオリに「行列ができてるのに何してるのかな、急いでほしいよね」と漏らすと、カオリは返事をするでもなく、その人を見ているのです。「ほら見て」とカオリが言う方に視線を移すと、トングを持った人に寄り添うように、店員さんが一緒にトレイを持って店内を回りだしたところでした。会計も済ませ、笑顔で「ありがとう」と言いながらお店を出て行くその人の後ろ姿に、店員さんは「また、いつでもお越しくださいね」と、温かい言葉を掛けるのでした。
その後、2人で近くの公園でパンを食べながら、さっきの出来事を話しました。カオリが「さっきの人、包帯してたのが見えたの。片方の手が使えない事情があったんだよね。でも店員さんがサポートして笑顔で帰っていったね」と。わたしは、事情を考えることもなく「急いでよ」といら立った自分を振り返っていると、そんな気持ちを察してか、カオリが「わたしも一緒。早くしてよって、思ってた。でも思い出したの。うちの子が小さかったころ、大荷物抱えて満員のバスに乗ったとき、大泣きしてね。焦ってとにかくバスを降りようとしたら、隣の人が『大丈夫ですよ。赤ちゃんは泣くのが仕事ですから』と言ってくれて、その言葉で車内の雰囲気も和らいで…うれしかったな」と話すのです。
相手の立場に立って考え行動する店員さんの姿と「ありがとう」と、表情をほころばせたお客さんの笑顔。日常の一場面が、自分自身の生き方を考える機会となった、貴重な体験となりました。

相手の立場に立つこと、それは、誰もがその人らしく過ごせる社会をみんなで築く一歩となるのではないでしょうか。