更新日:2025年5月1日
ここから本文です。
ある日、わたしはインターネットの掲示板で、最近話題の俳優に対する投稿を見つけました。「性格悪そう」「演技が下手で共演NG俳優らしい」「こいつ高校のころ…」などのうわさ話で盛り上がっている投稿を、わたしは夢中になって見入っていました。
そんなわたしに、親友のリョウが「何見てるの?」と言いながらのぞき込んできました。わたしは、リョウに画面を見せながら「おもしろい投稿だから『いいね』しようかなと思って」と答えたのです。すると「ちょっと、待てよ!」と、強い口調で言われたのです。わたしは「べつに書き込みするんじゃなくて『いいね』するだけじゃん」と軽い気持ちで答えるとリョウは「簡単に『いいね』したらダメだよ」と言うのです。リョウにいら立ったわたしは「大げさ過ぎだよ」と言い返し険悪な雰囲気になってしまいました。
帰宅後、イライラしているわたしに「どうしたの?」と尋ねてきた姉にリョウとのことを話しました。すると姉から「コロナ禍の時にリョウがネットの情報に苦しんだこと思い出して」と言われ、あることがよみがえってきました。それは、リョウが中学校を休みがちになってしまったことです。医療従事者だった母親そして家族は、ネット上でうわさや誹謗(ひぼう)中傷が広がり、その結果追いつめられて孤立してしまったからでした。
わたしは無責任に『いいね』ボタンを押すことで、不確かな情報の拡散に加担するところだったのです。明日学校で、ネット情報との関わり方についてリョウと話したいと思っています。
ネットは、誰もが気軽に利用できる便利さがある一方、使い方を間違えると根拠のないうわさや誹謗中傷を助長し人を傷つける凶器にもなります。自分に人権があるように、画面の向こう側にいる人にも人権があることを忘れてはいけません。