更新日:2025年5月22日
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「ただいま…」と、結婚を控えた兄が元気なさそうに帰ってきました。「何かあったの?」と聞くと「お前には関係ないことなの」と言いながら、自分の部屋に入っていきました。
その日の夕食後、兄が親に相談をしているのを横で聞いていると「実は、相手の父親が結婚式はやっぱり大安がいいんじゃないかって。僕たち二人は休みの取りやすい日で考えていたんだけど」と言うのです。わたしは不思議に思いながら「何で大安がいいの?」と聞くと、兄はうなずきながら「昔からの慣習の一つなんだ。実は僕たちも『ジューンブライド』って言って『6月に結婚すると幸せになる』というヨーロッパの言い伝えにこだわって6月に式を挙げる予定なんだけどね」答えるのです。
わたしは思わず「へー、知らなかった。それぞれいろんな思いがあるんだね。ところで、お父さんはどう思うの?」と聞くと、父は「慣習を大切にする考え方は理解できるよ。でも一番大事なのは、結婚する当事者二人の幸せじゃないかな。それはきっと相手のお父さんも同じだよ」と話すのでした。父の考えを聞いた兄は「そうだよね。相手のお父さんの思いを聞きながら、最後は二人でしっかり決めていきたい。二人の人生だから」と力強く言うのでした。
あの出来事から数か月がたった今日は、兄たちの結婚式です。初夏のさわやかな風を感じる日。参列者はみんな笑顔いっぱいに二人を迎えています。わたしは、兄たちの幸せそうな顔を見ながら「幸せとは何か」を考えている自分がちょっと大人になった気分になり、自然と笑顔があふれるのでした。
わたしたちは、幸福を願う意識などから「みんなが…」「昔から…」という理由で行動することがあります。大切なのは、さまざまな人の思いや行動を認め合う社会をつくることではないでしょうか。