更新日:2026年1月20日
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1人暮らしをしている母の家に、姉と一緒に行ったときのことです。「これ出しておいて」母がそう言いながらわたしに差し出したのは、同窓会に出席する返信はがきでした。わたしは「行くつもりなの?」と一方的に言いながら受け取りました。最近の母は、日付を間違えたり、約束を忘れたりすることが増えてきただけでなく、好きだったおしゃれもしなくなったし、同窓会で恥ずかしい思いをしたら…と考えていると姉が「同窓会に行って楽しめるかなぁ?」と言うのでした。姉とわたしは出席の返事を出す決心がつかず、母には内緒でわたしがはがきを預かることにしました。
帰宅後、テーブルに置いていたはがきを見た息子が「おばあちゃん、同窓会あるんだ。いいな」と言うので「最近の様子から考えると、友だちの前で恥ずかしい思いをしたらかわいそうだから、行かない方がおばあちゃんのためだと思ってるんだけど…」と、悩んでいることを話しました。すると息子は表情をかえ「最近の母さんたち、おばあちゃんがやろうとすることを何でも反対するよね。それって、本当におばあちゃんのためなの?」と言うので、とっさに「あなたには分からないのよ」と返していました。そんなわたしに息子は「この前、学校であった人権講演会で『みんなにとって、生きがいを感じ前向きな生活ができることは幸せなこと。それは高齢者も同じ』って話があったんだ。ぼくは、しっかり者のおばあちゃんにできないことが増えていくことはさみしいけど、幸せでいてほしい。だから、おばあちゃん抜きで決めてはいけないと思う」と真剣な顔で自分の考えを話してくれたのです。
わたしたち姉妹は、自慢の母が老いていくことを受け入れられず、母のためだと言いながら、実は自分たちが嫌な思いをしたくなかっただけなのかもしれません。母らしく生きていく大切さに気付かせてくれた息子の成長を感じながら、もう一度、姉と一緒に母に会いに行こうと思ったのです。

その人の思いや考えを尊重することで、その人らしく生きていくことにつながるのではないでしょうか。