更新日:2022年2月1日
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マコト(仮名)はとても明るく活発で、ちょっとした人気者だ。今年のクラス替えでは別々のクラスになったけれど、新しいクラスでもマコトは相変わらず、友だちとじゃれ合ったり、笑い合ったりして、楽しそうに過ごしている様子だった。
そんなある日、たまたまマコトと廊下で出会い「すぐに友だちができたみたいだな。楽しそうでいいよな」と、まだ新しいクラスで友だちが少ないぼくは声を掛けた。すると「うん。毎日、みんなからいじられてるよ」と言うので、ぼくは「新しいクラスではマコトは『いじられキャラ』なんだ。だからすぐに友だちができたんだ。いいよな」と返すと、マコトはニコッと笑って廊下を去って行った。
それから数か月がたったある日の放課後、ぼくもすっかりクラスに慣れたころ、元気のない顔をしているマコトを見つけた。「あれ、どうした?いじられキャラはいつも元気でなくちゃ」と、肩をポンとたたくと、それを振り払うように「うるさいな!」とだけ言い、行ってしまった。ぼくは「なんだよ」と少しイライラした気持ちになって家に帰った。
ちょうど姉も帰宅したところだったので、さっきのマコトとのことを話すと、姉は「それって、いじられるのが嫌になっているんじゃないの」と言うので、ぼくが「でもいつも楽しそうにしていたし、それに嫌ならやめてって言えばいいじゃないか」と言い返すと「周りが楽しそうにしているのに本当に言える?そんなに簡単なことじゃないと思う。もしも自分だったらって考えていくことが大事じゃないかな。それに…」と。
そういえば最近のマコトは、友だちと笑い合っているものの、何だか心から笑えていないような…。そして何より「それに『いじり』ってされる側が嫌な思いをしていたら『いじめ』と同じだと思うよ」という姉の言葉が頭から離れない。「まずは明日、マコトの話をじっくり聞いてみよう」と心の中でつぶやいた。
わたしたちは、その人の一面のみを捉えて、すべてを分かったように思いがちです。その人の気持ちになって寄り添っていくことが大事ではないでしょうか。