更新日:2020年5月15日
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「『その他』って何?」そう言って息子のユウ(仮名)が、紙を渡してきました。どうやら雑誌の読者アンケートのようで、見てみると性別欄に「男・女・その他」とありました。自分は男を選んだけれど、「その他」が気になって聞いたというのです。
性の在り方は多様だということは知っていましたが、何と説明すればよいかと困っていました。すると夫が「自分は男でも女でもないって思う人がいたら、どうすればいいの?」と言ったのです。「えっ。そんな人がいるの?」と不思議がるユウに、夫は体の性や心の性、そして好きになる性、表現の性など、性の在り方は多様で、男と女の二つだけでないことを説明したのです。ユウは、その度にうなずいたり首をひねったり…。そして、最後に「いろいろな人がいるんだね。『その他』がある意味が少し分かったかも。でも、このアンケートで性別を聞く必要があるのかな?」と言いながら、部屋から出ていきました。
わたしは、夫がなぜ詳しく知っているのかを尋ねると、「実は会社で、何度か研修を受けたんだ。たくさんのことを新たに知ってね。そうすると、いろいろなことが気になってきたんだ。例えば、昔の男女別出席簿とか、自分が持っている男像をユウに押し付けていないかとか、性の在り方について無意識のうちに誰かを傷つけていないかとか…」と話したのです。うなずきながら聞くわたしに夫はさらに「性別欄の『その他』が気になったユウをうれしく思うよ。わたしの話を聞いてさらに何かを感じたみたいだしね。ユウのように他の人の立場で想像する人が増えて、そもそも性別によって分ける必要があるのかを、いろいろな場面で考えていくことが大切だと思うんだ」と続けました。
わたしは、性別欄が男女の2つだったら、迷ったり嫌な思いをしたりする人がいるかもしれないなんて考えもしませんでした。想像力を高めていくためにもこれから学んでいきたいと思いました。
学ぶこと、自分の中の「当たり前」を見つめ直すことが、誰もが自分らしく生きられる社会へとつながるのです。