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更新日:2025年6月9日

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「響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで」-上-日本近代洋画史を彩る名品たち

  大分市上野の市美術館で「響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで」が開かれている。6月22日まで。同館学芸員が見どころを紹介する。
高橋 由一《宮城県庁門前図》1881年

高橋 由一《宮城県庁門前図》=1881年

  1981年に開館した宮城県美術館は、高橋由一など宮城県や東北地方にゆかりがある作家の作品とともに、海外作家の作品も多く所蔵しています。本展では、7,000点に及ぶコレクションの中から厳選された約70点の名品をご紹介いたします。その魅力のひとつは、日本近代洋画史を彩る名品の数々です。
  高橋由一は、幕末から明治の早い時期に油絵の技法を学び、日本近代洋画の父ともいわれる存在です。当時、油絵の技法は、西洋から新しい技術として取り入れられ、見たままを「リアル」に描くことができる技法として、対象を記録する目的で用いられました。いちはやく油彩技法を学んだ由一はそれを普及する役割も担っており、有名な《鮭》も、誰もが知るモチーフだからこそ、油彩技法の「迫真性」が一般によく伝わると考えたため描いたといわれます。由一は、三島通庸の委嘱を受け東北にて新道の記録画制作を行いました。本展出品の《宮城県庁門前図》は、その際に描かれた記録画です。

所蔵者、須之内徹の視点からも

海老原喜之助《ポアソニエール》1935年 洲之内コレクション
海老原喜之助《ポアソニエール》=1935年、洲之内コレクション

  本展では、このような由一作品をはじめ萬鉄五郎や松本竣介などによる名品によって日本近代洋画史を教科書的に追うことのできる展示に加え、「洲之内コレクション」を紹介します。
  同コレクションは、画廊でありコレクターでもある洲之内の旧蔵品。洲之内が最期まで手元に置いていたこれらの作品は、小さいながら魅力にあふれた作品群です。エッセイストとしてもしられる洲之内は、本展出品作についてもその文才を遺憾なく発揮したエッセイをのこしています。
  例えば、海老原喜之助《ポワソニエール》は、魚売りという日常的な主題を清らかに美しく描いた作品であり、作者の生活への愛情が感じられます。
  洲之内は戦時下、残酷な作戦にたずさわる中で、知人宅にあった本作の複製を眺めては、このような戦争という「偽りの時代」はいつか終わると勇気づけられたと語ります。戦後、偶然、本作と出会った洲之内は、何度も所蔵者と交渉してようやく本作を手に入れました。洲之内コレクションは、このように絵画を愛する洲之内による逸話に溢れており、作家や作品のみならず、洲之内徹という所蔵者の視点から絵画を楽しむことができます。

(大分市美術館学芸員 後小路萌子)

∇観覧料は一般1,200円、高校・大学生900円、中学生以下無料。25日午前10時30分から美術史家の安松みゆき氏による講演会がある。要観覧料。問い合わせは同館(097-554-5800)。


大分合同新聞 2025年5月23日(金曜日)朝刊 掲載

お問い合わせ

教育委員会事務局教育部美術館 美術振興課 

電話番号:(097)554-5800

ファクス:(097)554-5811

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