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更新日:2025年10月14日
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大分市美術館では、県内で活躍する、次世代の竹の工芸家や芸術家6人を育成対象者に選出し、同館のコレクションを創作の源泉とした挑戦的な新作に取り組んでもらうとともに、その新作を展示する展覧会を企画しました。
昨年は、岐部笙芳が県出身者として2人目となる人間国宝に選ばれ、河野祥篁(かわのしょうこう)が紫綬褒章を受章するなど、竹工芸の世界が活気づく1年でした。はじめに、育成対象作家の中から、岐部・河野の薫陶を受ける2人とその作品を紹介します。
別府市で活動する近藤雅代は、デザインの仕事を経て、竹工芸の道に入りました。日本伝統工芸展を活躍の場とする作家です。近藤は創作の源泉として大分市出身の日本画家・高山辰雄の「朝」を選び、黒とオレンジに染め上げた竹ひごを組み合わせ、「朝」の空気感を表現した花籠「帳(とばり)」を完成させました。あえて節のあるを強調した竹ひごが使われていますが、絵肌の質感にこだわったという高山の逸話にインスパイアされたものです。
由布市に工房を構える青柳慶子は、大学で美術を学び、中学校の教諭などを経て竹工芸作家になりました。かつてスケッチに訪れた阿蘇山に圧倒され、その姿を描けなかったという経験を持つ青柳は、竹を編むことで風景を描くという活動を行っています。今回選んだのは、日田市出身の日本画家・岩澤重夫の「清秋」です。青柳は、得意とする千鳥編みの技法を用い、紅葉に輝く山景を描きだした花籠「秋麗」を完成させました。着色に日本画の絵の具を用い、質感の表現に挑んでいます。
岩澤重夫の「清秋」(奥)に着想を得た青柳慶子の作品「秋麗」
つぎに、人間国宝・生野祥雲斎の系譜を継ぐ木崎和寿は、祥雲斎の息子である生野徳三の元で学んだ竹芸家です。木崎が挑んだのは、祥雲斎の「竹華器 怒涛」です。木崎はこの作品に憧れるあまり、祥雲斎が作品の構想を練った大分市白木の海岸で、台風の日に荒ぶる波を眺めたというエピソードを持ちます。先人への敬意と木崎自身の感動が結実した新作「Richness of spirit」は、「怒涛」と同じ櫛目編みを基調とし、躍動感の中に、静けさを感じさせる作品です。
大分の竹の伝統が、熱意ある若手作家たちによって受け継がれ、そして進化していることをぜひ展覧会でご体感ください。
(大分市美術館学芸員 曽我俊裕)
▽「Meet Bamboo!丘の上のコレクションと竹との出会い」は11月16日まで。観覧料は一般千円、高校・大学生700円、中学生以下無料
大分合同新聞 2025年10月10日(金曜日)朝刊 掲載
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