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更新日:2025年10月19日
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本展では、近藤雅代、青柳慶子による伝統工芸的な作品、木﨑和寿、谷口倫都(みちと)による造形的な作品に加え、「竹工芸」の枠におさまらない作品も紹介している。それが、長谷川絢(けい)と池将也による作品である。
長谷川絢「Echoes」は、造形的には、中西夏之の絵画作品と代表作「コンパクト・オブジェ」をオマージュしながら、長谷川の姉の妊娠をテーマとした作品。卵型のポリエステル樹脂に日用品を閉じ込めた「コンパクト・オブジェ」は、見えるけれど、触れることのできない日用品との独特な距離感をつくる。長谷川は、姉との会話やエコー写真を通して、見えるけれど触れられない存在である胎児を竹と樹脂を用いて造形化。それは、時間をかけて、めいの存在を受け入れてゆく過程であると同時に長谷川が叔母になってゆく過程でもある。
もうひとつの作品「Re.Rhizome」は荒川修作の制作全体を発想源にしたもの。長谷川は荒川をリサーチする中で、絵画や彫刻の分野を超え、構造物、建築と広がる荒川の制作を「リゾーム(根茎)」的ととらえ、竹(根茎を持つ植物)を用いて樹であり根でもある本作を制作。また、鑑賞者に思考や動作を促す荒川作品を発想源に、本作にも能動的に鑑賞しなければ気が付きづらい、3つの人工的な「しかけ」を隠した。
池将也「ギブミーフラワー」は、豚のはく製の胴体を真っ二つに切り、切り口をハムにした吉村益信による衝撃的な作品「豚;Pig Lib」を発想源とした。竹と一緒に壊れたラジカセやゲーム機の配線など人々が、かつて使用し、そして捨てていったものをやたら編にして、巨大な花籠を作る。自然物と人工物を無理やりに接合する本作は、さまざまな次元で、現代社会の矛盾を提示する。
一方、江戸時代後期の文人画(南画)家・田能村竹田の作品を発想源とした作品「幻景」は、竹田の絵画世界を画面の外に拡張するような作品。相反する世界観を表現する2作品によって作られる空間はそれ自体がひとつの作品であるともいえよう。
吉村益信と田能村竹田を発想源とした池将也の展示
以上の2人の作品には、「竹工芸」の枠を超え、ジャンルに限定されない自由な表現を見いだせる。同じ竹という素材を用いながら、6人それぞれの魅力あふれる作品と、大分市美術館のコレクションに対する、それぞれの作家による自由な解釈に触れられる本展をぜひお楽しみください。
(大分市美術館学芸員 後小路萌子)
▽「Meet Bamboo!丘の上のコレクションと竹との出会い」は11月16日まで。観覧料は一般千円、高校・大学生700円、中学生以下無料。
10月18日午後1時から、大分市荷揚複合公共施設コモンスペースでコシノジュンコさんが登壇する記念フォーラムが開かれる。入場無料。オンラインの聴講も可能。25日午後2時からは、大分市美術館でフランスのジャーナリスト、ドラ・トーザン氏の講演会が開かれる。要観覧料。いずれも申し込みが必要。応募は市美術館のホームページから。
大分合同新聞 2025年10月17日(金曜日)朝刊 掲載
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