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更新日:2026年10月23日
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大分市上野の市美術館では「国宝リボーン 高精細複製画が綴る、美の夢」(大分合同新聞社など主催)が開催中。同展の見どころを担当の学芸員が紹介する(3回続き)。
「画素」のような驚異の作品
本展の高精細複製画の制作で重要なオリジナル作品の撮影には、大分市のキヤノン大分工場で製造されたミラーレスカメラ EOS R5が使用されています。デジタル画像を構成する一つ一つの点を「画素(ピクセル)」といい、同機は最大4500万画素の高解像度を誇ります。さらに作品を細かく分割撮影し、精密につなぎ合わせることで、墨や岩絵具の色彩、金銀箔の反射、胡粉の凹凸までが、数億~数十億画素の巨大画像データで再現されています。
ところで、デジタルカメラの原型が世界で初めて開発されたのは、1975年、米国のコダック社でのことでした。画素数はわずか1万画素。一方、今からおよそ250年前の日本には、11万6000もの「画素」をもつ驚異の屏風絵が存在しました。
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| 「樹花鳥獣図屏風」高精細複製画/原本:伊藤若冲 筆/静岡県立美術館蔵 | |
描いたのは伊藤若冲(1716-1800)。濃彩の精緻な花鳥画から奔放な水墨画まで、写実性と幻想性を併せ持つ独自の作風を築いた、江戸時代を代表する「奇想の絵師」です。なかでも群を抜く独創性をみせるのが、本展後期の目玉の一つ《樹花鳥獣図屏風》。画面全体に約1センチ四方のマス目をつくり、一つ一つ彩色していくその数は、実に11万6000個以上。遠くから見ると色鮮やかな鳥や動物たちの楽園、近づけば無数の小さな色の集積となるその原理は、まるで現代のデジタル画像を構成する「画素」のよう。時代を先取りしたかのような前代未聞の発想と、根気のいる、気の遠くなるような作業から生み出された驚異の画面です。
時代と海を越えた美の競演
その隣には、近年、若冲に劣らぬ人気を博す長沢芦雪(1754-99)の《白象黒牛図屏風》が並びます。画面からあふれ出る巨大な白象と黒牛を大胆に描き、その傍らにはカラスと、芦雪の「カワイイ」造形を象徴する愛くるしい白い子犬。白黒と大小の鮮やかな対比が画面にユーモラスな趣を添えています。円山応挙譲りの写実を基盤としながら、自由な発想と大胆な構図で、見る人を驚きと楽しさで包み込む、芦雪芸術の魅力を凝縮した傑作です。
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| 「白象黒牛図屏風」高精細複製画/原本:長沢芦雪 筆/ロサンゼルス・カウンティミュージアム蔵 Los Angeles County Museum of Art, Gift of Etsuko and Joe Price Collection |
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さらに見逃せないのが、海を渡った葛飾北斎(1760-1849)の晩年を中心とした肉筆浮世絵8点。米国の所蔵館からの持ち出しが固く禁じられた「門外不出」の名品からは、北斎の圧倒的な画力と、尽きることのない絵画への情熱が伝わります。
一堂に会することの難しい名品が、時代と海を越えてここ大分に集う――高精細複製画だからこそ実現した、夢のような美の競演を、ぜひ会場でお楽しみください。
大分市美術館学芸員 野田菜生子
大分合同新聞 2026年8月26日(水曜日)朝刊 掲載
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