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更新日:2026年4月30日
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大分市上野の市美術館で「かがくいひろしの世界展」(主催・大分合同新聞社など、特別協賛・JA共済)が開かれている。6月21日まで。担当した美術振興課の岡村暢哉参事が2回にわたって展示の見どころを紹介する。
赤ちゃんも大人も笑顔に
赤ちゃんが生まれて初めて出合う絵本は「ファーストブック」や「赤ちゃん絵本」と呼ばれます。今日、そうした絵本の中で大人気となっているのが「だるまさんが」「だるまさんの」「だるまさんと」の3冊です。「だ・る・ま・さ・ん・が」のリズムに合わせて愛嬌たっぷりのだるまさんが「どてっ」ところんだり、「ぷしゅー」と縮んだり。変幻自在に姿を変えるだるまさんは生まれて数カ月の赤ちゃんの心をもしっかりととらえます。何かを学んだり、ストーリーが展開する以前に、まず「ぱっ」と反応できる仕掛けが盛り込まれているのです。この絵本は刊行直後から「0歳の赤ちゃんが反応する」「泣く子も笑う」と、読者の間や保育の現場で大きな反響を呼び、シリーズ3冊の販売部数は刊行16年で累計1千万部を超え、驚異的な人気となっています。
この「だるまさん」シリーズの作者が、かがくいひろし(加岳井広)です。かがくいは1955年、東京都生まれ、28年間にわたり千葉県で特別支援学校の教職員を勤める傍ら50歳で絵本作家となりました。
「だるまさんが」2008年ブロンズ新社
かがくいは次のように述べています。「絵本を読む子どもたちには笑っていてほしいと思っています(笑えなくても心の中で)。そして、その絵本を一緒に読んでいる大人の人も。」(「楽天ブックス著者インタビュー」2009年より)。
この「(笑えなくても心の中で)」は恐らく多義的で、言葉をもつ前の子どもというだけでなく、かがくいが教職員時代に向き合ってきた、笑うという反応が困難な子どもたちも含まれると思われます。笑えなくても何かの心理的反響が、願わくば身体のかすかな反応に表れてくれたらうれしい。そして、一緒に読んでいる周囲の大人たちも笑ってほしい―障がいの有無を超え、すべての人々に届けたい―というかがくいの思いが絵本になったのではないでしょうか。

「だるまさんが」初期ダミー本の原画2007年(ⒸHiroshi Kagakui)
かがくいは江戸時代の資料などをもとにだるま図のスケッチなどを残してはいますが、手や足があって、丸くどこかかわいらしい「だるまさん」の造形はかがくいオリジナルのものといってよいでしょう。ストーリー以前の、プリミティブ(原初的)な感覚・感情の発露を目指した絵本。「だるまさん」シリーズは現在でも赤ちゃんや周囲の大人たちをはじめ多くの人を笑顔にしています。
▽観覧料は一般1200円、高校生600円、中学生以下無料。月曜日休館。ゴールデンウイークと6月1日は開館。
大分合同新聞 2026年4月29日(水曜日)朝刊 掲載
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