第1章 計画策定の背景と目的 1 背景と目的  本市では、2000(平成12)年に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」に基づき、2004(平成16)年3 月「大分駅を中心とする交通バリアフリー基本構想」を策定しています。 また、2006(平成18)年に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下「バリアフリー法」という。)に基づき、「大分市バリアフリー基本構想」(以下「旧基本構想」という。)を2014(平成26)年3 月に策定し、市内全域において、高齢者や障がいのある人を含むすべての人が安全・安心にまちを回遊できる、人にやさしいまちづくりの推進に取組んできており、特に大分駅周辺地区については、具体的なバリアフリー化事業に取組んできています。 2018(平成30)年には、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正バリアフリー法」という。)が施行されました。 改正バリアフリー法において作成が示されている、移動等円滑化促進方針(マスタープラン)については、旅客施設を中心とした地区や高齢者や障がいのある人などが利用する施設が集まった地区(移動等円滑化促進地区)において、面的・一体的なバリアフリー化の方針を示し、広くバリアフリーについて考えを共有するものです。 そして、バリアフリー化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想であるバリアフリー基本構想の作成に繋げていくことが求められています。 本市では、2020(令和2)年4 月に改正バリアフリー法に基づき、「だれもが 自由に どこへでも 豊かさあふれる大分市」を基本理念に掲げた、「大分市バリアフリーマスタープラン」と、大分駅周辺地区と鶴崎駅周辺地区において「大分市バリアフリー基本構想」を策定して、バリアフリーのまちづくりを進めてきましたが、計画の目標期間を迎えました。 現在、わが国は急速な高齢化が進行し、4人に1人が65歳以上の高齢者となる超高齢社会を迎えています。 また、障がいのある人が障がいのない者と同等に生活し、活動する社会の実現を目指すノーマライゼーションの普及やユニバーサルデザインの考え方の導入等、誰もが相互に個性を尊重し、支え合う共生社会の実現が求められています。 本市における総人口は、今後減少傾向に転じることが見込まれ、高齢化は増々進行していく傾向にあります。 高齢者や障がいのある人を含むすべての人にとってやさしいまちづくりを推進していくために、今後、市民の皆さま、関係機関と連携しながら、県都にふさわしいゆとりと豊かさが実感できるバリアフリーのまちづくりの実現を目指し、「第2期大分市バリアフリーマスタープラン」に改訂いたします。 第2期バリアフリーマスタープランでは、2020(令和2)年6月及び2021(令和3)年4月に施行された改正バリアフリー法を受けて、共生社会の実現に向け、ハード対策に加え、「心のバリアフリー」の観点からの取組を充実するものとします。 2 計画の位置付け  大分市バリアフリーマスタープランは、旧基本構想をもとに、バリアフリー法に基づいて2020(令和2)年に策定しました。 また、上位計画である「大分市総合計画」、「大分県福祉のまちづくり条例」等を踏まえるとともに、市のまちづくりに関する施策や事業と連携して、大分市におけるバリアフリーのまちづくりの実現に向けた施策を講じるものとしています。 3 計画期間  第2期大分市バリアフリーマスタープランの計画の期間については、2025(令和7)年度から2034(令和16)年度までの10年間とします。 施策の進捗状況のフォローアップを毎年実施するものとし、社会情勢の変化や施策の進捗状況等を踏まえ、2029(令和11)年度(5年を目途)に中間見直しの必要性について検討を行います。 4 マスタープランの評価と課題(取組方策)の整理 「主要な施設のバリアフリー化の状況」「生活関連施設のバリアフリー整備の取組状況」「バリアフリーに関するソフト施策の実施状況」「特定事業の進捗状況」「住民アンケート」「ヒアリング調査」などの結果から、マスタープランの評価と課題(取組方策)の整理をします。 今後の取組方策 (1)公共交通 (2)道 路  鉄道やバス、タクシーに関する公共交通のバリアフリー化においては、バリアフリー法の基準を目標に今後も努力する必要があります。  公共交通はさまざまな人が利用するため、公共交通事業者・一般利用者・高齢者や障がいのある人など、それぞれの立場を理解・尊重し合い、相互のコミュニケーションを図るとともに、交通事業者による適切な接遇を行うことも重要です。  道路特定事業は、路線や箇所数が多くなることから、事業の推進が厳しい状況にあります。しかし、バリアフリーのネットワークを形成するには、生活関連経路の整備は重要です。経路ごとの重要度や利用者のニーズに対応し、かつ、実現可能な整備を実施するように進めていくことでネットワークの形成を促進する必要があります。 また、管理者境界は連携してバリアフリー化に取り組むことも重要です。 (3)公 園 (4)建築物・駐車場 (5)交通安全 (6)心のバリアフリー  都市公園のバリアフリー化においては、老朽化した施設の改修にあわせてバリアフリー法の基準を目標に、引き続き整備する必要があります。  施設の整備や改修に当たっては、こどもから高齢者や障がいのある人などのさまざまな利用者を想定したユニバーサルデザインの観点が重要です。  新たに整備する建築物・駐車場については、バリアフリー法の基準に適合した整備が必要です。特に隣接する施設の管理者と連携してバリアフリー化に取り組むことが重要です。  既存の建築物・駐車場のバリアフリー化においては、バリアフリー法の基準を目標に今後も努力する必要があります。  エレベーターやトイレ、駐車場等の適正利用の推進に取り組む必要があります。  交通安全施設のバリアフリー化(音響信号やエスコートゾーン等の設置)は、利用者のニーズの反映や交通管理者と道路管理者の連携、維持管理を考慮した整備を行っていく必要があります。最新のデジタル技術などを取り入れることも考えられます。  交通安全施設の整備だけでなく、交通ルールや利用者マナーについての周知も重要です。  一般の方、高齢者や障がいのある人などがそれぞれの立場を理解した相互のコミュニケーションを図っていく必要があります。そのためにも、さまざまな障がいに対する理解を深めることが重要です。  これまでの「心のバリアフリー」に関する取組の継続及び充実を図る必要があります。特に、施設の適正利用の促進、分かりやすい情報発信などが重要です。 第2章 バリアフリーの推進に関する基本理念・基本方針 1 基本理念 障がいの有無や年齢にかかわらず、安心して生活ができるようにバリアフリーへの理解がさらに深まり、まちの環境整備が進むことで、バリアフリーのまちづくりが本市全体に広がっていく、そのようなイメージが伝わる表現として、次のような基本理念を設定しています。 基本理念 だれもが 自由に どこへでも 豊かさあふれる 大分市  だれもが 自由に どこへでも 歩行空間や公共交通機関、公共施設をはじめとするハード施設の整備とともに、心のバリアフリーの取組を推進することで、障がいの有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、誰もが安全で安心して、円滑に行きたい場所へ自由に移動することができる生活環境を目指します。  豊かさあふれる 大分市 誰もが円滑に移動することができるためのハード面のバリアフリー、及びソフト面のバリアフリーの推進により、結果として得られるのは生活圏域の拡大です。これに伴い、多くの文化的・社会的活動への参加へ結びつけることができ、共生社会を実現します。 2 基本方針 基本理念に基づき、バリアフリー化の推進に向けた課題の解決に向けて、これまでの基本方針をより一層発展させるために、バリアフリーマスタープランの基本方針を次のように定めます。 基本理念 だれもが自由にどこへでも豊かさあふれる大分市 基本方針 1 バリアフリー・ユニバーサルデザインを基本としたまちづくりの市全域への拡大  「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、年齢、障がいやケガの有無、性別等にかかわらず、誰もが社会参加ができる安全で快適なまちづくりを推進します。 バリアフリーマスタープランの策定により、移動等円滑化促進地区の選定及び重点整備地区を設定し、バリアフリー・ユニバーサルデザインを基本としたまちづくりを市全域へ拡大します。 2 誰もが円滑に移動できるバリアフリー環境の持続的な形成と強化  本市の都市計画、公共交通ネットワークの特性を踏まえ、高齢者や障がいのある人をはじめ誰もが、歩行または公共交通を利用してどこへでも円滑に移動ができるバリアフリー化の環境整備を推進します。不特定多数の人々が利用する施設において、バリアフリーの取組を進めます。 バリアフリーの推進だけでなく、バリアフリー環境の持続的な形成のためにバリアフリー化を行った施設の維持管理も重要です。 3 心のバリアフリーの推進と強化  安全・安心に社会生活ができるようにするために、物理的な整備だけでなく、市民一人ひとりがバリアフリーについて理解を深め、お互いに協力し、助け合うことにより、心のバリアを取り除くことが必要です。 市民一人ひとりが高齢者や障がいのある人などへの理解と意識の醸成を図るため、これまでの取組を継続して進めていくとともに、実生活の中でコミュニケーションの機会を増やすなど啓発活動の充実を図ることが重要です。 4 市民・事業者・行政の協働による住民参加の取組  事業者や国・県・市の連携を図り、不特定多数の人々が利用する施設を含む一体的かつ重点的なバリアフリー化を推進します。 また、計画段階での高齢者や障がいのある人などとの意見を交わすなど、住民参加によるバリアフリー化に取組みます。 バリアフリー化に当たっては、隣接する施設の管理者や占有事業者など多岐にわたる関係者同士の連携や、地域住民の理解などが重要です。 5 継続的なバリアフリー化の進行管理を検証  バリアフリー化は単発的な整備で完了するものではなく、また、費用面や整備内容によって短期的に整備を完了することが難しい場合もあることから、面的かつ一体的な整備を継続的に取り組むことが必要です。 継続的な取組を行うに当たっては、取組の進行管理を行いながら、PDCA サイクルによる検証を行い、結果に応じて見直しや新たな取組を行います。 6 計画立案から周知へ、バリアフリーの普及・啓発活動の推進  施設のバリアフリー化によるハード整備の充実とともに、高齢者や障がいのある人などに対して、市民一人ひとりがやさしさや思いやりを持って接するために、バリアフリー化に関する本市の取組状況を共有し、内容の充実した啓発・広報活動に取組みます。 基本理念を網羅した6つの基本方針は、バリアフリーを取り巻く課題の解決を導くための原動力です。 3 移動等円滑化促進地区の選定 移動等円滑化促進地区(重点整備地区候補)は、国の「移動等円滑化の促進に関する基本方針」における移動等円滑化促進地区の選定要件や「旧基本構想」の選定方法を踏まえて、次の条件に該当する地区をバリアフリー化の必要性が高いと位置付けて選定します。 <選定条件> 1 日平均利用者数が3,000 人以上※の旅客施設(鉄道駅)を中心とした地区 ※本計画においては、新型コロナウイルスの影響を鑑みて、2018(平成30)年度から2022(令和4)年度までの5年間の平均利用者数を用います。 ※「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、1 日当たりの平均的な利用者数が3,000 人以上である鉄道駅については、原則として移動等円滑化を実施するとされているため、基準として設定しています。 資料 大分市統計年鑑(令和5年版)より 図 市内の駅別1日平均利用者数(2018年度から2022年度の平均)※一部の駅を除く 大分 32,051人 大在 3,948人 鶴崎 3,460人 高城 3,089人 坂ノ市 2,228人 牧 1,332人 西大分 898人 大分大学前 2,609人 敷戸 1,919人 中判田 1,525人 滝尾 691人 南大分 1,031人 賀来 958人 古国府 894人 豊後国分 600人 選定要件と選定条件が当てはまるJR大分駅、JR大在駅、JR鶴崎駅、JR高城駅の周辺地区を移動等円滑化促進地区(重点整備地区候補)と選定します。 第3章 移動等円滑化促進地区におけるバリアフリーに関する事項 1 移動等円滑化促進地区の区域設定 移動等円滑化促進地区の区域を設定するに当たり、要件を踏まえ生活関連施設及び生活関連経路における選定の考え方については、以下の通りです。 (1)移動等円滑化促進地区の条件  バリアフリーマスタープランの移動等円滑化促進地区では、下記の考え方に従い、区域設定を行います。 区域設定の考え方  鉄道駅を中心とした半径約1kmの区域(施設間の移動が通常徒歩で行える範囲)とする。  高齢者や障がいのある人を含む多くの方が利用する生活関連施設を含む。  主要な道路、鉄道、河川等の地形地物を区域界に設定する。  明確な地形地物がない場合は、字界、町丁目界等を考慮する。  市街地整備計画やその他関連する事業計画がある場合は、整合性等を考慮する。 (2)生活関連施設の抽出 1)生活関連施設の位置付け  バリアフリー法の生活関連施設は、「高齢者や障がいのある人などが日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設その他の施設」と規定されています。 旅客施設、官公庁施設、福祉施設、医療施設、文化施設、商業施設等多様な施設を位置付けることができます。 特定事業の実施は、義務づけられていません。 しかし、施設のバリアフリー化を実現可能な限り推進するように努めることが求められています。 生活関連施設の考え方  常に多数の人が利用する施設  高齢者や障がいのある人などが常時利用する施設 2)生活関連施設の選定の考え方  移動等円滑化促進地区における生活関連施設の選定の基準となる基本的な考え方は、多くの高齢者や障がいのある人などを含む不特定多数の利用が見込め、鉄道駅から通常徒歩による移動範囲(半径約1km を想定)の施設とします。 区域境界付近の施設は、利用圏域の大きさや主要な道路、鉄道、河川等の地形地物の区域界を考慮して選定しています。 「旧基本構想」において設定した生活関連施設の選定基準を参考に、下表の内容を設定しています。 表 生活関連施設の選定基準 施設分類   候補選定の基準 ①公共施設 対象施設すべてを候補とする ②文化施設 常に多数の利用が見込める対象施設を候補とする ③福祉施設 地域包括支援センター、老人いこいの家、障がい者福祉関係施設、 福祉型障がい児入所施設、保育施設等 ④商業施設 店舗面積1,000㎡以上の施設 ※ ⑤医療施設 病床数(ベッド数)が20以上の施設 ※ ⑥路外駐車場  大分駅周辺地区 駐車収容台数が250以上の施設  その他地区 駐車収容台数が30以上の施設 ⑦宿泊施設  大分駅周辺地区 宿泊部屋数が100以上の施設  その他地区 宿泊部屋数が50以上の施設 ⑧学校 特別支援学校及び小中学校 ⑨公園  大分駅周辺地区 不特定多数の利用者が見込まれ、面積が10,000㎡以上の公園、 または、イベント会場となっている公園  その他地区 不特定多数の利用者が見込まれ、面積が5,000㎡程度以上の公園、または、イベント会場となっている公園 ※既存データで把握できる範囲 (3)生活関連経路の選定の考え方 生活関連経路は、生活関連施設相互を連絡する経路として1経路以上を選定するものとします。 2 大分駅周辺地区におけるバリアフリーに関する事項 図 施設位置(大分駅周辺) 整備の方向性  大分駅周辺地区においては、ハード整備に関する特定事業を実施します。  老朽化している交通安全施設等のバリアフリー環境の維持修繕やバリアフリー整備を推進します。  マスタープランの基本方針に基づき心のバリアフリーに関する取組を、市民や公共交通事業者等との協働により推進するとともに、ソフト対策に関する特定事業として、心のバリアフリー教育の実施や各種施設の適正利用に関する広報、啓発活動の充実など、意識の向上を図るための施策を推進します。 3 高城駅周辺地区におけるバリアフリーに関する事項 図 施設位置(高城駅周辺) 整備の方向性  高城駅周辺地区においては、本市における地区の位置付けや交通の状況、施設の集積状況からみた拠点性等を把握し、高齢者や障がいのある人などが円滑に移動できるバリアフリー環境の整備を推進します。  マスタープランの基本方針に基づき、市民や公共交通事業者等との協働により心のバリアフリーに関する取組を推進します。 4 鶴崎駅周辺地区におけるバリアフリーに関する事項 図 施設位置(鶴崎駅周辺) 整備の方向性  鶴崎駅周辺地区においては、国道197号の拡幅事業など各種特定事業を実施し、高齢者や障がいのある人などが円滑に移動できるバリアフリー環境の整備を推進します。  マスタープランの基本方針に基づき、心のバリアフリーに関する取組を、市民や公共交通事業者等との協働により推進するとともに、ソフト対策に関する特定事業として、心のバリアフリー教育の実施や各種施設の適正利用に関する広報、啓発活動の充実など、意識の向上を図るための施策を推進します。 5 大在駅周辺地区におけるバリアフリーに関する事項 図 施設位置(大在駅周辺) 整備の方向性  大在駅周辺地区においては、本市における地区の位置付けや交通の状況、施設の集積状況からみた拠点性等を把握し、高齢者や障がいのある人などが円滑に移動できるバリアフリー環境の整備を推進します。  マスタープランの基本方針に基づき、市民や公共交通事業者等との協働により心のバリアフリーに関する取組を推進します。 6 大分市全域におけるバリアフリー整備に向けて  前項で示す「大分駅周辺地区」「高城駅周辺地区」「鶴崎駅周辺地区」「大在駅周辺地区」の4つの移動等円滑化促進地区において、地区の特性やバリアフリーの整備状況を踏まえた上で、バリアフリー法に基づく移動等円滑化基準をもとにした面的・一体的なバリアフリー整備を推進します。 しかし、本計画で掲げている基本理念である「だれもが自由にどこへでも豊かさあふれる大分市」の実現に向けては、高齢者や障がいのある人を含むすべての人が安全・安心にまちを回遊できるまちづくりを市全域で推進する必要があります。 そのため、市全域において、本計画で示す方針や「大分県福祉のまちづくり条例」等の条例をもとにバリアフリーに配慮した整備を推進します。 第4章 バリアフリーに関するソフト施策 1 心のバリアフリーとは  施設のバリアフリー化に代表されるハードの整備が進んでも、高齢者や障がいのある人などに対して市民一人ひとりがやさしさや思いやりを持って接することができなければ、真の意味でのバリアフリーが実現することにはなりません。 高齢者や障がいのある人などの自立した日常生活や社会生活を確保することの重要性について関心を持ち、理解を深め、自然に支え合うことのできる大分市となるために、各種の啓発・広報活動及びさまざまな機会を活用した幅広い教育等が求められます。 また、高齢者や障がいのある人、そして外国人住民数が増加傾向にあることも踏まえ、ユニバーサルデザインによる対応とともに、『心のバリアフリー』の施策に取組んでまいります。 『心のバリアフリー』とは、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」によると、「さまざまな心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと」とされています。 そのためには、一人一人が具体的な行動を起こし継続することが必要で、各人がこの『心のバリアフリー』を体現するためのポイントは、以下の3点とされています。 (1) 障がいのある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障がいの社会モデル※1」を理解すること。 (2) 障がいのある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い※2及び合理的配慮の不提供※3)を行わないよう徹底すること。 (3) 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。 ※1)障がいの社会モデル 障がいのある人が日常・社会生活で受ける制限は、社会におけるさまざまな障壁と相対することによって生ずるものという考え方を「障がいの社会モデル」といいます。 障がいのある人にとって社会にある障壁は、事物、制度、慣行、観念等のさまざまなものがあり、日常生活や社会生活において相当な制限を受ける状態をつくっており、社会の責務として、この障壁を取り除いていく必要があります。 ※2)不当な差別的取扱い 障害者差別解消法では障がいを理由とする、財・サービス、各種機会の提供を拒否したり、それらを提供するに当たって場所・時間帯等を制限したりするなど、「障がいがない人と異なる取扱い」をすることにより障がいがある人を不利に扱うことのないようしなければなりません。 ※3)合理的配慮の提供 日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障がいのない人は簡単に利用できても、障がいのある人にとっては利用が難しく、結果として障がいのある人の活動が制限されてしまう場合があります。 このような場合には、障がいのある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があります。 障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、障がいのある人に対する「合理的配慮の提供」を求めています。 合理的な配慮の提供に当たっては、障がいのある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、ともに対応策を検討していくことが重要です。 【障がいのある人が社会で直面しているバリア】 一般に「物理的なバリア」、「制度的なバリア」、「文化情報面のバリア」、「意識上のバリア」の4つのバリアがあるといわれています。  物理的なバリア 公共交通機関、道路、建物などにおいて、利用者に移動面で困難をもたらす物理的なバリアのことを言います。 例 路上の放置自転車、狭い通路、急こう配の通路、ホームと電車の隙間や段差、建物までの段差、滑りやすい床など。  制度的なバリア 社会のルール、制度によって、障がいのある人が能力以前の段階で機会の均等を奪われているバリアのことを言います。 例 学校の入試、就職や資格試験などで、障がいがあることを理由に受験や免許などの付与を制限するなど。  文化情報面のバリア 情報の伝え方が不十分であるために、必要な情報が平等に得られないバリアのことを言います。 例 視覚に頼ったタッチパネル式のみの操作盤、音声のみによるアナウンス。点字・手話通訳のない講演会など。  意識上のバリア 周囲からの心ない言葉、差別、無関心など、障がいのある人を受け入れないバリアのことを言います。障がいに対する誤った認識から生まれます。 例 精神障がいのある人は怖いといった偏見。障がいがある人に対する無理解、奇異な目で見たりかわいそうな存在だと決めつけたりすることなど。 2 心のバリアフリーの取組方策  本市は、バリアフリーマスタープランを策定するとともに、基本構想(大分駅周辺地区・鶴崎駅周辺地区)では、生活関連施設及び生活関連経路を設定し、バリアフリー事業を進めてまいりました。 また、心のバリアフリーに関する取組については、県・市のホームページや既存のイベントを活用して実施しており、一定の評価が得られています。 しかしながら、心のバリアフリーの施策で求められる「実際に行動につなげるための支援となる幅広い教育活動の推進」及び「理解を深めるための啓発・広報活動の推進」を実行するには、より一層、これまでの成果を市民一人ひとりに伝え、周知し、普及していかなければなりません。 これからも、市民が高齢者や障がいのある人のことを知って理解し、誰もが安心して暮らせる社会を実現していくことが求められます。 心のバリアフリーの取組は、バリアフリーマスタープランの基本方針に掲げている、「バリアフリー・ユニバーサルデザインを基本としたまちづくりの市全域への拡大」、「心のバリアフリーの推進と強化」、「計画立案から周知へ、バリアフリーの普及・啓発活動の推進」における活動を展開するため、「気づく・知る」、「理解する」、「実践する」を方針として、心のバリアフリーの取組を推進します。 第5章 計画の実現に向けて 1 これからの移動等円滑化促進地区の在り方 「だれもが 自由に どこへでも 豊かさあふれる 大分市」を実現するため、移動等円滑化促進地区の選定には、さまざまな地域特性に配慮することが重要になります。 地域特性としては、日常生活に必要なサービスを提供する施設が集積する地区や高齢者や障がいのある人などが多い地区等が考えられます。 今後は、バリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくりを市全域に広げていくために、本市の地域特性を踏まえた、移動等円滑化促進地区の選定方法の検討を進めます。 2 バリアフリーマスタープランの推進体制 (1)大分市におけるバリアフリー化推進のための考え方 バリアフリーのまちづくりは、計画のみならず事業実施後についても、市民・事業者・行政が協働して整備内容の点検・評価等を実施する仕組みが必要です。 そして、市民等からの意見集約を行い、「計画・実施・評価・改善」による継続した取組(スパイラルアップ)を実践してまいります。 (2)バリアフリー推進体制の継続 面的・一体的なバリアフリー化を進めていくためには、関係者の連携が重要であることから、市民・事業者・行政が連携し、大分市バリアフリー事務局が庁内体制の構築を図りながら、それぞれの役割に立ってバリアフリー化を進められるよう「大分市バリアフリー基本構想推進協議会」と相互に連携を図ります。