第4部 にぎわいと活力あふれる豊かなまちづくり(産業の振興) 第1章 特性を生かした生産業の展開 第1節 工業の振興 【動向と課題】  本市は、鉄鋼、化学、半導体、電子・電気機器など最先端の技術を持つ多種多様な企業が立地し、活発な産業経済活動を展開しています。これらの企業は裾野が広く、関連する産業が展開し、国内でも有数の工業都市として発展してきました。  近年の本市における製造業は、リーマンショック後の景気低迷により事業所数や従業員数に減少傾向が見られるものの、製造品出荷額は微増の状況にあります。  今後も生産活動を活発化し、新たな雇用や工業全体の活力を生み出していくには、既存企業に対する支援はもとより、企業誘致やベンチャー企業を含めた新しい産業の創業、市場の拡大が見込まれるエネルギー産業など高度技術に立脚した産業の集積、人材の育成や技術力の向上による地域産業の競争力の強化が求められています。 【基本方針】  既存産業の振興を機軸としながら、企業誘致の推進やさまざまな創業支援機関と連携した新たな産業の創業支援により、産業集積を推進します。また、中小企業における技術の高度化、経営の効率化の促進や企業活動を支える人材の確保と育成の支援を実施し、企業の競争力の強化を図ります。 【主な取組】 高度技術に立脚した産業集積の推進 (1)企業立地の推進 ◆地域経済の活性化や雇用の場の創出につながる企業の立地を促進します。 ◆市内企業の事業継続・拡大につながる設備投資等を支援します。 ◆副生成物の利用等による省エネ・低炭素化社会に貢献する技術を有する企業の立地を促進します。 ◆市場の拡大が見込まれる医療やICTなど、新製品・新技術の開発につながる先端技術産業や研究開発型産業の誘導に向けた取組を推進します。 (2)(※)インキュベーション機能の充実 ◆産業振興の拠点となる施設機能の充実を図るなかで、今後、成長が期待される産業や(※)都市型産業への支援、人材育成と人的ネットワークの形成など、起業や新事業の展開をサポートするシステムの構築に努めます。 ◆大学等教育機関や金融機関などのさまざまな創業支援機関と連携して支援体制を強化し、創業しやすい環境の整備に努めます。 中小企業の競争力の強化 (1)高度化・効率化の促進 ◆企業と大学等による新事業・新技術の共同研究等を円滑にする大学等教育機関や金融機関等との連携体制の整備のほか、事業の共同化や新技術の共同開発などにつながる異業種間・企業間における交流を促進し、中小企業の技術力の向上を図ります。 ◆生産力の向上や販路拡大等につながる取組への支援に努めます。 ◆融資制度の充実などにより資金調達の円滑化を図るとともに、経営診断、経営・技術相談などを行うことにより中小企業の経営基盤の強化を促進します。 (2)人材の育成・確保 ◆大学や関係機関等と連携し、講演会や研修会などの内容・実施体制の充実を図り、企業活動の活性化を担う人材の育成・確保に努めます。 ◆自主研修の開催に対する支援など企業が人材育成に取り組みやすい環境の整備を行います。 (3)グローバルな事業展開への支援 ◆(※)ジェトロ等の支援機関と連携し、グローバルな事業展開を目指す企業を支援します。 ※関連計画 『大分市商工業振興計画』 【目標設定】  誘致企業件数  現状値(2015年度実績)8件  目標値(2016〜2019年度の累積)28件 市内創業支援機関等の支援による創業件数  現状値(2015年度末現在)76件  目標値(2019年度見込)200件 市が開催・支援する人材育成に係る講座及び研修の延べ受講者数(年間)  現状値(2015年度実績)1,488人  目標値(2019年度見込)1,800人 海外への経済交流支援企業数  現状値(2015年度実績)35社  目標値(2016〜2019年度の累積)160社 <用語解説> ※インキュベーション機能  自力では難しい起業に関して、事業化のスケジュールや資金等の相談、安価な賃貸スペースの提供等、幅広く支援すること。 ※都市型産業  都市の機能集積を活用することにより都市に立地することが比較的優位となるソフトウェア業や情報処理業などの産業。 ※ジェトロ  独立行政法人日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization)の略称。諸外国との貿易拡大及び対日投資の支援などによる経済協力の促進と、開発途上国の調査・研究を通じて、日本の経済・社会のさらなる発展に貢献することを目指す。 第2節 農業の振興 【動向と課題】  本市においては、平野部、中山間部の広い範囲にわたり水稲・野菜・果樹・畜産などの多彩な農業が営まれ、中でも施設園芸や酪農などは法人化による大規模な企業的経営が行われています。  一方で農業者の高齢化や担い手の不足、耕作放棄地の増加、さらには鳥獣による農作物被害の増大などにより、経営耕地面積は減少しています。  また、社会構造やライフスタイルの変化による農産物に対する消費者ニーズの多様化や高度化のさらなる進展、人口減少社会の到来による食に関する市場規模の縮小が懸念されています。  このため、優良農地の調査・集積を行い、競争力のある産地の担い手へ集積を図ることや集落単位で農地などの地域資源を守り、継承していく取組が必要となっています。  さらに、多様化する流通や消費者ニーズに的確に対応するため、生鮮食品としての販売だけでなく、(※)6次産業化や農商工連携による個性ある産品づくりを促進していく必要があります。  このように、今後は地域の特性を最大限に生かした競争力、持続力、魅力を有する本市農業の一層の振興が求められています。 【基本方針】  優良農地の担い手への集積をはじめとする効率的な経営基盤の整備と安全・安心で魅力あふれる農畜産物の生産により、農業者の所得向上と競争力のある産地の育成を図ります。  また、観光や教育など多様な分野とも連携を深め、都市農村交流や(※)食農教育の推進に努めるなど、農業・農村の多面的機能を生かし、市民一体となった持続可能な農業振興を図ります。 【主な取組】 多彩な都市型農業を支える人づくり ◆研修制度の拡充や生産基盤の整備への支援等を通じて、(※)認定農業者、集落営農組織、新規就農者、農業に参入する企業、高齢農業者、女性農業者や福祉事業者など、多様な担い手の確保・育成を図ります。 ◆融資・価格安定制度の充実、関係機関・団体との連携などにより、担い手の経営の改善及び安定を支援します。 ◆市民が日常の食生活と地元農産物との結び付きについて理解を深められるよう、消費者と生産者・食品関連事業者などとの交流促進や食育活動の推進を図ります。 信頼され魅力あふれるものづくり ◆地域の特性を生かし、多様化する消費者ニーズに即した付加価値の高い農畜産物の生産振興と供給体制の整備を図ります。 ◆低コスト・省力化技術の導入などにより、生産性が高く、競争力のある産地づくりを推進します。 ◆農畜産物の生産履歴の開示、家畜伝染病に係る衛生対策などにより、安全・安心な農畜産物の生産・供給を図ります。 ◆減化学肥料の利用促進や減化学合成農薬栽培の推進、農業廃棄物の適正処理と有効活用など、環境に配慮した農業の推進を図ります。 ◆消費者や食品関連事業者等への地元農産物に関する情報の発信や各種イベントの開催などにより地産地消を促進します。 ◆6次産業化や農商工連携を促進し、地域資源を生かした魅力ある加工品開発を図ります。 特性を生かした活力ある地域づくり ◆農道、用排水路の生産基盤・生活基盤の整備を促進し、農業者の持続的な生産体制と快適な農村環境の整備を図ります。 ◆担い手への農地集積や地域の特性に応じた適正な土地利用を促進し、遊休農地の発生防止と有効活用に努めるとともに、優良農地の保全を図ります。 ◆都市と農村の交流活動を支援することにより農村の活性化を図ります。 ◆農業・農村の持つ多面的機能の維持・発揮の促進を図るため、地域の共同活動を支援し、農地や水路など地域資源の適切な管理を推進します。 ◆鳥獣被害防止に対する取組を強化し、良好な営農環境の保全を図ります。 ※関連計画 『大分市農業振興基本計画』『大分市地産地消促進計画』『大分市国土利用計画』 【目標設定】  (※)認定新規就農者数(累積)  現状値(2015年度末現在)7人  目標値(2019年度見込)27人 (※)主要品目の産出額  現状値(2014年度末現在)42億2,900万円  目標値(2019年度見込)43億3,700万円   集落での(※)共同活動取組集落数  現状値(2015年度末現在)80  目標値(2019年度見込)100 直販所・直売コーナーの販売額  現状値(2014年度末現在)25億円  目標値(2019年度見込)26億5,000万円 <用語解説> ※6次産業化  農林水産業者による生産・加工・販売の一体化や、農林水産業と第2次・第3次産業の融合等により、農山漁村に由来する農林水産資源と、食品産業、観光産業等の産業とを結び付け、地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を促すこと。 ※食農教育  食の問題や農業・農村の役割と現状について理解を深めるために、家庭における食事や学校給食、社会教育活動等を通して行う全般的な活動。 ※認定農業者  農業経営基盤強化促進法に基づいて、効率的で安定した農業経営を目指すため作成する「農業経営改善計画」(5年後の目標)を市長に提出して認定を受けた農業者のこと。 ※認定新規就農者  農業経営基盤強化促進法に基づいて、効率的で安定した農業経営を目指すため作成する「青年等就農計画」(5年後の目標)を市長に提出して認定を受けた農業者のこと。 ※主要品目  ニラ・オオバ・ミツバ・水耕セリ・イチゴ・ピーマン・パセリ・酪農・肉用牛(繁殖) ※共同活動取組集落数  農地を守るため、共同活動を行っている集落数。(※)人・農地プラン作成集落(累積)+(※)中山間地域等直接支払制度取組集落数+(※)多面的機能支払制度取組集落数 ※人・農地プラン  高齢化が進む集落・地域において、話し合いにより、今後の農地利用の在り方やその農地を利用する担い手の位置付けなどを検討し、おおむね5年後の地域農業の方向性を定めたもの。 ※中山間地域等直接支払制度  傾斜地が多く農業生産条件が不利な中山間地域等において、農業生産活動などに対して助成することで平坦地との条件不利の補正を行う制度。 ※多面的機能支払制度  多面的機能とは、農業・農村の有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承などの機能のこと。これらの機能を維持・発揮するための地域共同活動に対して一定の助成を行う制度。 第3節 林業の振興 【動向と課題】  森林は木材などの森林資源の供給のほかに、水源のかん養や二酸化炭素の吸収などの多面的機能を有しています。今後、これらの森林資源の維持や多面的機能を発揮していくためには、自然環境に配慮した適正な(※)間伐等による森林の整備・保全が必要となってきます。  近年、戦後に植林したスギやヒノキなどの人工林が利用時期を迎え、木材として供給が可能な状態となっているにもかかわらず、外国からの木材等の輸入増加による価格の低迷や森林所有者の高齢化などにより、十分な利用に至っていない状況です。  このようなことから、消費者のニーズに即した供給体制の整備や担い手の確保・育成、木材の需要拡大等が課題となっています。  また、林業を営む上で、重要な生産基盤である林道については、開設は進んでいますが未舗装の箇所も多く、今後、一層の整備が必要とされています。 【基本方針】  森林が有する資源や多面的機能が維持、発揮できるよう、森林の利用と保全とのバランスを取りながら、森林の整備や保全を計画的に行います。  また、林業経営の安定化に向け、生産基盤と供給体制の整備や(※)木質バイオマスの利用など木材の需要拡大を図ります。 【主な取組】 健やかな森林をはぐくむ人づくり ◆森林組合等の(※)林業事業体の強化を図るとともに、(※)林業作業士の確保・育成や(※)森林施業プランナーの技術向上に努めます。 ◆持続的な森林経営の確立を図るため、地域ごとに森林所有者の連携・共同による(※)森林経営計画の策定を促進します。 ◆森林整備や加工流通体制の強化を推進するため、林業や木材産業の関係団体によるネットワークを構築します。 森からの恵みがあふれるものづくり ◆民有林において森林経営計画に基づいた適正な造林・育林事業を推進します。 ◆森林整備の団地化や低コスト化を促進し、消費者ニーズに即した地域材の安定供給体制を構築します。 ◆学校等の公共建築物において木造化や内装の木質化を図るとともに、公共工事等における木材利用を促進することで木材需要の拡大を図ります。 ◆森林整備の際に発生する未利用材等の有効活用を図るため、木質バイオマスの利用を促進します。 ◆しいたけなどの特用林産物については、気候に左右されない生産施設や機械設備等の導入を支援し、安定した供給体制の整備に努めます。 次世代につなぐ地域づくり ◆NPOやボランティア団体との連携により、都市と山村との交流を促進することで、里山の保全を図ります。 ◆市有林については、市民共有の財産として、周辺地域の模範となるよう、計画的な間伐、枝打ち等を推進し、災害に強い優良林の造成に努めます。 ◆安全かつ災害に強い林道、作業道の整備を推進します。 ◆森林レクリエーションなど市民の健康やいやしを促進する場として、多様な森林の整備を図ります。 ※関連計画 『大分市森林整備計画』『大分市国土利用計画』 【目標設定】  年間間伐面積  現状値(2014年度実績)122ha  目標値(2019年度見込)195ha 年間素材生産量  現状値(2014年度実績)9,113?  目標値(2019年度見込)24,300? 主要林道舗装延長(累積)  現状値(2015年度末現在)1,875m  目標値(2019年度見込)2,800m <用語解説> ※間伐  良品な木材の生産と森林を健全な状態に維持していくため、木を伐採し適正な密度にすること。長期的かつ計画的な実施が必要。 ※木質バイオマス  家畜排せつ物や下水汚泥など生物由来の再生可能な資源(バイオマス)のひとつで、チップや製材端材、樹皮、間伐材、木質ペレットなどのこと。発電用燃料としての利用が期待されている。 ※林業事業体  間伐や枝打ち、主伐などの森林の整備を行う林業の経営体。森林整備のほかに、森林の調査や施業提案、森林計画制度管理・実行なども行い、森林所有者に代わって地域の森林管理を担う。 ※林業作業士  主に林業事業体に属しており、間伐や枝打ちなどの森林整備を担う作業員のこと。 ※森林施業プランナー  森林所有者に対して森林の整備方針や経費などについて提案する技術者のこと。また、効率的な整備を行うために個々の森林の集約化についても提案する。 ※森林経営計画  森林所有者などが、経営を行う森林における施業や保護について作成する計画。計画に基づいた効率的な森林の施業と適切な森林の保護を通じて、森林の持つ多面的機能を発揮させることを目的としている。 第4節 水産業の振興 【動向と課題】  本市の水産業は、別府湾・豊後水道域における海面漁業と、県内の2大河川である大分川・大野川での内水面漁業に大別され、海面漁業では、5t未満の動力船・船外機船など小規模な漁船による一本釣りや各種(※)刺し網漁業等を中心とした沿岸漁業、内水面漁業では、アユ・ウナギなどを対象とした漁業が営まれています。  近年においては、海岸線の埋立てなどによる漁場環境の変化、担い手不足、漁業者の高齢化などにより、漁獲量の減少が続くとともに、養殖漁業の普及や輸入水産物の増加などによる魚価の低迷が続いており、今後は、水産資源の保全と漁獲量の維持とのバランスを保つことによる生産性の高い漁業が必要となってきます。また、消費者ニーズの多様化と時代の流れに対応した流通体制の整備と消費の拡大が求められています。 【基本方針】  豊かな水産資源を守り育てるための良好な漁業環境の確保や漁港・漁場などの基盤整備と後継者の確保・育成により、生産性が高く持続可能な漁業の振興に努めます。  また、多様化する消費者ニーズに即した供給体制の充実など、市民が安心して消費できる水産物の安定供給を目指します。 【主な取組】 明日の漁業を開く人づくり ◆研修制度をはじめとする新規就業者支援により、担い手の確保・育成に努めます。 ◆市民が日常の食生活と地場水産物との結び付きについて理解を深められるよう、各種イベントの開催や食育活動の推進等により、地場水産物のPRや魚食の普及に努めます。 信頼され魅力あふれるものづくり ◆海面漁業ではイサキ、カレイ、アワビなど、内水面漁業ではアユ、ウナギなどの(※)種苗放流を促進します。 ◆「関あじ」「関さば」などのブランドの維持や消費者ニーズに即した流通体制の整備を促進します。 ◆漁業者やその団体が主体的に取り組む6次産業化や農商工連携を促進し、新たな商品開発と販路の拡大を図ります。 ◆違反操業の監視強化などを促進し、水産資源の保全を図ります。 豊かな海をはぐくむ地域づくり ◆水産資源を維持・増大するために、(※)魚礁の設置や(※)増殖場の造成を推進します。 ◆漁業の拠点となる漁港施設や漁港海岸保全施設の計画的な整備や長寿命化・災害対策の強化を推進します。 ◆荷捌き施設、(※)蓄養施設など、流通関連施設の整備や更新を促進します。 ◆関係機関と協力して漁場環境の保全や豊かな海をはぐくむ森づくり活動などを促進します。 ◆市民の海洋レジャー・レクリエーション需要や遊漁者等の増大に対応した秩序ある海面の利用を促進します。 ※関連計画 『大分市水産基本計画』『大分市国土利用計画』 【目標設定】  増殖場の造成面積  現状値(2015年度末現在)25,620u  目標値(2019年度見込)63,637u 魚礁設置量  現状値(2014年度末現在)58,659(※)空?  目標値(2019年度見込)64,833空? (※)Iターン就業者数(累積)  現状値(2015年度末現在)7人  目標値(2019年度見込)17人 ブランド魚種の漁獲量  現状値(2015年度実績)263.76t  目標値(2019年度見込)264.26t ※空?(くうりゅうべい)  魚礁の体積を表す単位。魚が隠れる目的などで設けた魚礁の内部空間を含めた体積数。 <用語解説> ※刺し網漁業  魚の回遊を遮るように網を張り、網目に刺さった魚やからまった魚を漁獲する漁業。 ※種苗放流  種苗生産(人工的に卵をふ化させて稚魚や稚貝をつくること)、中間育成(天然種苗や人工種苗を放流できる大きさまで育てること)、放流(適正サイズまで中間育成した種苗を、生息に適した海域に放すこと)の一連の作業。 ※魚礁  魚を集めて効率的に漁獲することを目的にコンクリート製や鋼製の人工の構造物を海底に設置したもの。稚魚の保護や育成の効果もある。 ※増殖場  産卵場所や稚魚の隠れ家となる藻場を造成するために海底に自然石やコンクリートブロックを設置した場所。 ※蓄養施設  漁獲された魚介類の出荷調整を行ったり、漁獲によるダメージを回復させたりするための水槽や生けすなどの施設。 ※Iターン  都市で生まれ育った者が、地方に移り住むこと。 第2章 活気ある流通・サービス業の展開 第1節 商業・サービス業の振興 【動向と課題】  本市の商業・サービス業は、新産業都市建設の進展によりもたらされた人口の増大や市民生活の質の向上を受け、大きく発展してきました。  一方、近年、大型商業施設の進出やコンビニエンスストアなどの新業態店舗の展開、高速交通体系の整備や情報通信端末の普及、拡大などにより、商業・サービス業における市場競争は激化しています。  これにより、地域の商店街では空き店舗の増加や高齢化による後継者不足も顕著になってきており、市民生活を支える「地域商業の振興」や「雇用機会の創出」「地域コミュニティの担い手」などの商店街に求められる機能の低下が危惧されています。  今後は、人口減少社会の到来による市場縮小が予想されるなかで、経営基盤の強化をはじめとした、産業集積の推進、創業支援、人材育成など、商業・サービス業の振興を図るための多様な施策の展開が求められています。 【基本方針】  商業・サービス業の活性化に向けて、人材育成などの支援を通じ経営基盤の強化を図ります。また、創業支援などにより、店舗の集積を促進し、商店街の機能が最大限発揮できるように、商店街組織の機能強化を図ります。  さらに、刻々と変化する商業・サービス業の動向や課題を的確に把握するため、個々の事業者との意見交換の場を積極的に設けるとともに、商工会議所などの中小企業支援団体との連携を強化します。 【主な取組】 特色ある個店づくり ◆商店の独自性、専門性など個性化を支援するとともに、ICTの活用など、多様化、高度化する消費者ニーズに対応した個店づくりを促進します。 魅力ある商店街づくり ◆消費者の利便性の向上、快適な買物空間の創出のための施設等の設置・運営や、にぎわい・憩いの場の創出のためのイベントなどに対し支援を行うことにより、地域性に配慮した商店街の活性化や地域コミュニティの拠点としての機能の充実を図ります。 経営基盤の強化 ◆高度な専門的知識、技能を有する人材の育成・確保に努めるとともに、経営相談や経営診断体制の充実を図ります。 ◆業務の高度化・効率化のための融資制度等の充実に努めるとともに、新分野・新業態への事業展開のための支援を行います。 ◆同業種間の連携、異業種間交流などによるネットワークづくりを促進します。 創業支援 ◆(※)インキュベーション機能や融資制度等の充実を図り、さまざまな価値観に対応した新たな商業・サービス業の創業を支援します。 意見交換の場の充実 ◆企業訪問や各種団体の会合等への参加を通し、課題やニーズの把握に努めます。 ◆中小企業支援団体と積極的な情報交換を行い、効果的な施策の展開に努めます。 ※関連計画 『大分市商工業振興計画』『大分市中心市街地活性化基本計画』 【目標設定】  小売商業の年間商品販売額  現状値(2014年度実績)4,863億円  目標値(2019年度見込)5,000億円 卸売商業の年間商品販売額  現状値(2014年度実績)7,822億円  目標値(2019年度見込)8,300億円 <用語解説> ※インキュベーション機能  インキュベーションとは、創業を目指す人ないし創業間もない企業や新分野へ展開しようとする企業に対して不足する資源(ソフト支援サービス、低賃料スペース等)を提供し、その成長を促進させることを目的とする、新たな事業を創出するための一連の支援システムとの連携活動のこと。 第2節 流通拠点の充実 【動向と課題】  近年、少子高齢化に伴う人口減少の進行、社会構造の変化に伴う消費者ニーズの多様化、流通構造の変化など、卸売市場を取り巻く環境が大きく変化するなかで、市場の取扱量が減少しており、卸売業者や仲卸業者の経営環境は厳しさを増しています。  本市の卸売市場は、2006(平成18)年4月、地方卸売市場に転換し、市場の活性化等を図ってきましたが、転換後も取扱高の減少傾向に歯止めがかからない状況です。  今後、市民の「食」の安全・安心に対する意識が高まるなか、安定的かつ効率的に生鮮食料品等を供給していくため、経営展望に基づき、管理運営体制のさらなる見直しを進めていくことが必要となります。  また、本市では、大分港大在公共埠頭を中心とする地域が、輸入促進地域として指定されたことに伴い、流通港湾としての機能の強化や港湾施設の整備が進められました。  他の流通港湾との取扱貨物量の競争が激化しているなか、東九州の玄関口であるという立地特性を生かし、ポートセールスによる大分港の利用貨物の増加や新規航路の開拓などに、関係機関と連携して取り組むことが求められています。  また、高速交通体系などの整備により、交通の利便性が高まったことに伴い、大分港の競争力強化を図るため、大分港大在コンテナターミナルの港湾機能の充実に取り組むとともに、 大分流通業務団地の利用促進を図り、広域流通拠点の整備に取り組む必要があります。 【基本方針】  公設地方卸売市場は、市民へ生鮮食料品等を安定的かつ効率的に供給する流通拠点であることから、市場機能の充実を図ります。  また、本市が、東九州における広域流通拠点となるため、さらには、環太平洋地域やアジアにおけるモノや情報の国際交流拠点となるためには、大分港大在コンテナターミナル及び大分流通業務団地を本市における流通拠点と位置付け、これらの機能の向上や活用の促進、連携強化を図ります。 【主な取組】 公設地方卸売市場の機能向上 ◆市民の「食」の安全・安心に対する意識の高まりのなか、関係機関と連携して品質管理を徹底し、市場の信頼性の向上に努めます。 ◆市場の市民への一般開放やホームページを利用した情報発信等を通じて、地元産食材をはじめとした生鮮食料品等の消費拡大を推進します。 大分港大在コンテナターミナルの活用促進 ◆大分港大在コンテナターミナルを拠点とした良好な流通環境を活用し、新規航路の開設や貿易港としての体制の整備を促進するとともに、国内外への広報活動、ポートセールスなどを関係機関と連携して展開します。 大分流通業務団地の活用促進 ◆融資・助成制度の活用促進や関係機関との連携による企業誘致活動などにより、大分流通業務団地への企業の移転、誘致を促進し、物流の集団化・共同化等による効率的な流通システムの構築に努めます。 ※関連計画 『大分市商工業振興計画』 【目標設定】  公設地方卸売市場における取扱金額(青果部)  現状値(2015年度実績)149億円  目標値(2019年度見込)149億円 公設地方卸売市場における取扱金額(水産部)  現状値(2015年度実績)85億円  目標値(2019年度見込)85億円 大分港大在コンテナターミナルの取扱実入りコンテナ数(外貿及び内貿)  現状値(2015年度実績)31,599(※)TEU  目標値(2019年度見込)38,000TEU <用語解説> ※TEU 「Twenty-foot Equivalent Unit」の略で、20フィート(長さ約6m)コンテナに換算したコンテナ個数の単位。 第3章 安定した雇用の確保と勤労者福祉の充実 【動向と課題】  近年、本市の有効求人倍率は改善傾向にありますが、職種・産業ごとに見ると、大きな偏りがあり、「雇用のミスマッチ」が顕著になっています。  また、雇用者総数が増加するなかで、雇用形態としては、正規雇用者数は減少し、非正規雇用者数は増加傾向にあります。  今後、人口の減少が想定されるなか、地域経済をより活力あるものへと発展させていくためには、働く意欲のある人が、希望する働き方と適性に応じて就労できるよう機会の拡大を図ること、企業の人材確保・育成の支援に努めていくこと、若者の職業意識の醸成や女性・高齢者・障がい者のさらなる社会進出を促進することなどが求められています。  さらに、すべての勤労者が、安心して働き続けることができる社会の実現に向け、処遇の改善や雇用環境の充実、ワーク・ライフ・バランスの推進が求められています。 【基本方針】  (※)UIJターンの促進や「雇用のミスマッチ」の解消などに向けて就労機会の拡大を図るとともに、企業の人材確保・育成を支援することで、安定した雇用環境の構築に努めます。  また、中小企業勤労者に重点を置いた福利厚生の向上を促進し、すべての勤労者が「働きがい」を実感し、安心して働ける良質な労働環境の整備を推進します。 【主な取組】 就労支援 (1)就労機会の拡大 ◆企業誘致、新規・成長産業の育成・支援、既存企業の振興などを促進し、多様な就労の場と安定した雇用の確保に努めます。 ◆関係機関と連携し、若者・女性・高齢者・障がい者など働く意欲のあるすべての人々を対象とした就労支援セミナーを開催します。 ◆市外で働く人や求職者が、本市で就職する機会を拡げることでUIJターンを促進します。 ◆企業の人材確保・育成への支援を積極的に推進することにより、若者・女性・障がい者などの就労機会の拡大や早期離退職防止に取り組みます。 ◆(公社)大分市シルバー人材センター等と連携し、高齢者の就労機会の拡大に努めます。 (2)技能奨励と若年者の職業意識の早期醸成 ◆技能尊重の気運の醸成に努めるとともに、異業種の技能者間の交流を促進します。 ◆中学生を中心とした若年者を対象として、「仕事・働くこと」について考える機会を提供します。 (3)相談体制の充実 ◆関係機関と連携し、若年者などへ就労に関する情報の提供やキャリアカウンセリング等を行い、相談体制の充実に努めます。 勤労者福祉の充実 (1)福利厚生の充実 ◆中小企業等における勤労者向けの融資制度の充実や退職金制度の普及促進など、企業規模による福利厚生面での格差の解消に向けた取組を推進します。 ◆(一財)おおいた勤労者サービスセンター等の関係機関と連携し、中小企業で働く勤労者、パート・アルバイト、派遣労働者などの勤労者福祉の充実に努めます。 (2)労働環境の整備促進 ◆関係機関と連携し、労働災害や職業病の未然防止を図るなど、勤労者が安心して働ける環境の整備を促進します。 ◆関係機関と連携し、年間総労働時間の短縮や仕事と子育てを両立できる環境づくりなど、ワーク・ライフ・バランスの実現と、労働環境の改善に向けた啓発に努めます。 (3)融資制度の活用の推進 ◆勤労者の住宅取得などに関する融資制度の適切な活用を推進します。 (4)余暇などへの支援 ◆勤労者の地域活動や文化・スポーツ活動などを行う各種協議会への支援や情報提供に努めます。 ◆レクリエーションや異業種・異文化体験などを通じた勤労者の相互交流を推進します。 ※関連計画 『大分市商工業振興計画』 【目標設定】  (公社)大分市シルバー人材センターの事業実績金額  現状値(2015年度実績)5億6,170万円  目標値(2019年度見込)7億円 中小企業勤労者向けの福利厚生機関((一財)おおいた勤労者サービスセンター)の会員数  現状値(2015年度末現在)19,436人  目標値(2019年度見込)24,600人 UIJターン就職者数((※)おおいた産業人財センターの登録者のうち、大分市へ就職した人数)  現状値(2015年度実績)72人  目標値(2016〜2019年度の累積)300人 <用語解説> ※UIJターン  UIJターンとは、大都市圏の居住者が地方に移住する動きの総称のこと。Uターンは出身地に戻る形態、Jターンは出身地の近くの地方都市に移住する形態、Iターンは出身地以外の地方へ移住する形態を指す。 ※おおいた産業人財センター  県が開設した、地域経済や雇用を支える県内中小企業の自立・挑戦を応援するために、企業における人材確保・定着を支援する拠点。 第4章 魅力ある観光の振興 【動向と課題】  近年の人口減少に伴い、国内消費の低下が懸念されるなか、国内外からの交流人口の増加や、地域経済への大きな波及効果が見込まれる観光産業に対する期待はますます高まっています。  東九州の拠点都市として発展してきた本市は、高崎山自然動物園や水族館などの観光施設や、「関あじ」「関さば」や「とり天」をはじめとする豊かな食などの観光資源を有しています。さらに2015(平成27)年に、東九州自動車道が延伸するなか、大分駅ビル・大分県立美術館をはじめとする新施設がオープンするなど、新たな魅力と都市の風格が備わってきました。  これらを踏まえ、国内はもとより、ビザ要件が緩和された東南アジアをはじめとするアジア圏からさらなる観光誘客を推進していく必要があります。  また、2019(平成31)年のラグビーワールドカップ、2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピックの開催により増加が期待される外国人旅行者を受け入れる体制づくりも求められています。  こうしたことから、本市の個性や魅力を高めPRするとともに、歴史や文化でつながる都市などと連携して広い圏域で誘客を図る仕組みづくりに取り組んでいくことがさらに重要となっています。 【基本方針】  本市が有する観光資源の魅力再発見に努めるとともに、本市を訪れる人が「また来たい」と感じてくれるような「おもてなしのまちづくり」に取り組みます。  また、県下の市町村や九州各都市等との広域的な連携を強めるとともに、本市を応援してくれる個人・団体・事業者・関係機関と協力し新たな魅力の創出に努めます。  こうした取組の中で醸成された本市の魅力を戦略的に発信し、国内外での大分市の知名度を高め、交流人口の増加を目指します。 【主な取組】 観光資源の魅力向上 ◆美しい自然や点在する観光スポットをはじめとして、まつり、イベント等本市が備える多彩な観光資源の魅力向上に努めます。 ◆「関あじ」「関さば」「とり天」「大分ふぐ」などを生かした食観光の推進を図ります。 ◆本市の歴史や文化を学ぶ観光や参加体験型の観光、さらには本市の産業を活用した産業観光など、既存観光資源の磨き上げや新たな観光資源の掘り起こしに取り組みます。 ◆ビジネスやコンベンションを目的とした来訪など多様な観光ニーズに対応する体制づくりに努めます。 ◆訪れた人が快適に過ごすことができるよう、外国人旅行者も視野に入れた受け入れ体制の整備・充実に努めます。 豊の都市おおいたの魅力発信 ◆大分市の知名度を高めるため、観光パンフレットやポスター、ホームページや(※)SNS等各種情報発信ツールの充実を図るとともに、民間の観光情報サイトの活用などを行います。また、映像を活用した観光PRの展開を図るなど、さらなる誘客に努めます。 ◆観光大使など本市にゆかりのある人材との連携・協力による情報発信を行い、話題性のあるプロモーション展開を図ります。 ◆韓国・中国などの東アジアやビザ要件が緩和された(※)東南アジア5カ国をはじめ、世界の多くの国々に向けた観光誘致活動などを展開し、海外からの誘客に努めます。 観光振興に向けた連携 ◆個人や団体、事業者、関係機関とのスムーズな連携が取れる体制の整備を図ります。 ◆県下の市町村や九州各都市、歴史的・文化的なつながりを持つ都市などとの交流・連携を強化し、外国人旅行者も視野に入れた広域的な観光ルートの確立に努めます。 ◆ラグビーワールドカップ2019や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等多くの集客が望めるイベントの開催を好機ととらえ、関係機関と連携し、さらなる観光客誘致に向けた戦略的な取組に努めます。 ※関連計画 『大分市観光振興計画』 【目標設定】  観光入込客数  現状値(2014年実績)3,437,002人  目標値(2019年見込)4,600,000人 観光宿泊客数  現状値(2014年実績)776,947人  目標値(2019年見込)880,000人 外国人観光宿泊客数  現状値(2014年実績)13,991人  目標値(2019年見込)35,000人 <用語解説> ※SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)  会員制のウェブサイト上で職業・趣味・写真・文章などを公開し、会員同士で交流できる機能を提供するサービス ※東南アジア5カ国  タイ・マレーシア・ベトナム・フィリピン・インドネシア