基本構想 第1 目的  この基本構想は、これから本市がめざすまちの姿(都市像)と、それを実現するために行う必要がある対策(基本的な政策)を定めるものです。  本市は、1971(昭和46)年に「大分市総合開発計画」を策定して以来、6次にわたる改定を行い、それぞれの時代に即した基本構想を策定し、市民福祉の向上、教育・文化や産業の振興、防災安全の確保、環境の保全、都市基盤の整備など各分野における諸施策の総合的かつ計画的な推進に努めてきました。この間、2012(平成24)年には、市民主体による自治の実現を図ることを目的に制定した「大分市まちづくり自治基本条例」において、総合計画が行政運営を行う上での最上位の計画として位置付けられ、市が行う施策の方向性を定める指針として策定することが義務付けられました。  こうしたなか、近年、本市においては、わが国の急速な少子高齢化の波を受け、人口構成の変化に伴う生産年齢人口の減少が進んでおり、地域経済の停滞や地域コミュニティの弱体化など、都市の活力低下を招く看過できない問題が懸念されています。  このため、国が重要政策として掲げている「まち・ひと・しごと創生」への取組に対応し、雇用、産業、子育て、医療、教育、防災、まちづくりなどの総合的な施策について、本市の特性を最大限に生かしながら積極的な推進を図ることが求められています。  このように、社会経済情勢が大きく変化するなかで、喫緊の課題に即応していくためには、次の時代をしっかりと見据え、効果的な施策をスピード感を持って新たに展開していく必要があります。  この基本構想においては、これまで本市が先人から受け継いできた都市の個性や特性を守り育てるとともに、市民の幸せな暮らしの実現に向け、市民主体によるまちづくりを行うために、これから本市が担っていかなければならない地位と果たすべき役割を考慮しながら、新しい時代の総合的かつ計画的な行政運営の指針を定め、新たな目標と発展の方向性を明らかにすることとします。 第2 基本構想の期間  この基本構想の期間は、2016(平成28)年度から2024(平成36)年度までとします。 第3 大分市の特性  1 自然特性 (位置)  本市は、アジア太平洋諸国に近接し、九州の東端、東九州軸の北部、瀬戸内海の西端に位置し、大分県の扇状県域の要に当たり、南は臼杵市及び豊後大野市、西は別府市、由布市及び竹田市に接し、九州でも有数の広い市域を有しています。 (地勢)  本市の地勢は、高崎山(たかさきやま)をはじめ鎧ヶ岳(よろいがだけ)、樅木山(もみのきやま)などの山々が連なり、市域の約半分を森林が占めるなど、豊かな緑に恵まれています。また、これらの山々を縫うように一級河川である大野川、大分川が南北に貫流しながら別府湾に注いでいます。  海岸部においては、北部沿岸海域は水深が深く、東部沿岸は豊予海峡に面したリアス式海岸で天然の良港となっています。  このように、海、山、川のすべてがそろい、自然と都市が共存する優れた都市環境を有しています。 (野生生物)  大分の特産種オオイタサンショウウオ、大分県を北限とするキムラグモなどの貴重な希少種をはじめ、多くの野生生物が生息しています。また、国指定の天然記念物である高崎山のサル生息地や県指定の天然記念物である高島のウミネコ営巣地、ビロウ自生地など、野生生物の生息環境にも恵まれています。   2 歴史特性 (通史的特徴)  縄文時代から現代まで、瀬戸内ルートを主幹にした「海の道」を媒介に歴史を刻んだ東九州の要地です。  また、古代・豊後国府以来、現代まで1300年にわたり県都としての役割を担っています。       ○先史〜古墳時代     西日本屈指の縄文遺跡である横尾遺跡では、海を介した黒曜石の交易の跡が見つかっています。また、古墳時代の大分は、県下最大級の前方後円墳・亀塚古墳や築山古墳などに代表される古墳が別府湾南岸沿いに数多く遺されていることから分かるように、豊後における古代勢力形成の中核となっていたことがうかがえます。     また、「壬申の乱」での勲功者・大分(おおいたの)君(きみ)恵(え)尺(さか)のものと推定される九州唯一の畿内型終末期古墳・古宮古墳に象徴されるように、東九州地域において畿内(中央)文化の影響が最も濃厚に及びました。   ○古代・奈良時代     古代大分は「豊後国風土記」に広々とした美田・碩(おお)田(きだ)の美称で記されているように、豊かな生産の地であるとともに、全国に建立された64か国の国分寺のうち3指に入る壮大な七重塔を持った豊後国分寺が造営されました。   ○古代・平安時代     大分元町石仏、高瀬石仏、曲石仏などに代表される磨崖仏文化が大分川流域を中心に広く展開され、また、豊後一の宮が置かれ、神仏混淆(こんこう)の精神文化が展開されました。   ○中世・戦国時代     九州北部に大きな勢力を築いた戦国大名大友宗麟は、聖フランシスコ・ザビエルを豊後府内に招き、海外との貿易を積極的に進めました。府内のまちは海外の品々があふれ、異国の人々が行き交い、西洋の医学、天文学、音楽、演劇をはじめとする南蛮文化がいち早く花開き、日本を代表する国際色豊かな貿易都市として繁栄しました。   ○近世・江戸時代     府内藩の城下町のほか、熊本藩の港町鶴崎・佐賀関や宿場町野津原、岡藩の港町三佐や宿場町今市、臼杵藩の在町戸次、延岡藩の代官所があった千歳、幕府領の高松など小藩分立のなか、独特の地域づくりが展開されました。   ○近現代     明治以降、幾度かの市町村合併により現在の本市が形成されてきました。その経緯から、旧市町村の拠点であった地区は現在も地区拠点としての機能を持ち、その地区拠点を中心に地域が形成されています。     市全体としては、(※)新産業都市として、鉄鋼、石油化学、銅の精錬など重化学工業を中心に発展し、近年では、IT関連の企業が進出するなど、さまざまな産業が集積しています。     鉄道3線に加えて高速道路の整備が進み、県内外からの主要幹線道が合流しており、豊後水道を経由して内外に通じる海上交通の発達と相まって、東九州における拠点都市として発展を続けています。   ※新産業都市:1962(昭和37)年に制定された新産業都市建設促進法により、工業開発拠点に指定された地域。地方での工業開発を図り、大都市圏への人口・産業の集中の防止と地域格差の是正を目的に指定。 第4 大分市を取り巻く社会情勢と課題 少子化の進行と人口減少社会の到来  わが国の総人口は2008(平成20)年をピークに減少し始め、1970年代前半ごろから続く出生数の減少による少子化の進行で、人口減少に歯止めがかからない状況となっています。加えて、地方と東京圏の経済格差の拡大等が、若い世代の地方からの流出を招くことにより、地方における人口減少が地域経済の縮小などの影響を与え、さらに人口減少を加速させるという悪循環の連鎖に陥るリスクが高まっています。  本市においても、全国に比べ出生率はやや高く推移しているものの、(※)人口置換水準には及ばない状況であり、今後、人口が減少へと転じることが予測されています。  このように少子化に伴う人口減少は、社会経済の根幹を揺るがす危機的状況を招くおそれがあり、結婚、出産、子育てに温かい社会や定住人口の増加を図るための住みやすい社会が実現できる環境を整備していくことが求められています。   ※人口置換水準:現在の人口を維持できる合計特殊出生率(15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に産むとした時の子どもの数に相当)の目安。国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2014)」によると、2012(平成24)年現在では2.07となっている。 超高齢社会の到来  わが国の高齢化は世界に類を見ない速度で進展しており、本市においても、人口の4人に1人が65歳以上の高齢者になろうとしています。このような超高齢社会の到来は、医療や介護などの社会保障関係費をさらに増大させるほか、地域コミュニティにおいては、担い手の高齢化や人材不足が深刻化するなど、自治体経営にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。  高齢者本人にとっても都市にとっても目指すべき理想の姿は、健康で元気な高齢者が生きがいを持って、住み慣れた地域で豊かに暮らすことができる社会であり、高齢者が生涯現役として、地域のニーズに応じて活躍できる「地域の支え手」となれるような仕組みを構築することが求められています。 地域コミュニティの活性化  少子高齢化の進展や核家族の増加、生活圏域の拡大、中山間地域の過疎化などにより、地域の連帯感や帰属意識、活力が低下し、住民相互の交流や支え合いの場としての地域コミュニティ機能が次第に低下しています。  さらには、人間関係の希薄化や地域に対する無関心から、地域の防災力の低下など、地域における安全・安心の確保も危ぶまれています。  こうしたなか、住民や自治会、ボランティア団体、NPOなど多様な主体との連携により地域課題を発見、解決していく仕組みを構築することとあわせて、住民同士が共助の精神でつながる地域コミュニティを活性化し、活力と魅力ある地域社会を若い世代へとつなげていくことが求められています。 安全・安心への関心の高まり  2011(平成23)年3月、わが国は未曽有の複合災害となった東日本大震災を体験し、自然の猛威に大きな衝撃を受けました。近い将来には、南海トラフ地震が予想されるなど、わたしたちの生活に甚大な被害を与えるような自然災害の発生が懸念されるとともに、悪質で多様化する犯罪や国際テロ、さまざまな感染症の発生など、市民の日常生活の安全を脅かす事案が増大しており、人々の安全・安心に対する関心はますます高まってきています。  災害や犯罪などを未然に防止し、市民の生命と財産を守ることはまちづくりの原点であり、また、発生した場合の被害を最小限にとどめる総合的かつ計画的な危機管理を行うとともに、市全体で事前防災や減災、防犯に向けた取組を充実するなど、強靭な地域づくりが必要となっています。 高度情報化社会の進展  「情報・知識の時代」という大きな社会の変化を迎え、わたしたちの日常生活においても、パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器が普及し、買い物や金融などの身近なサービスをはじめ、新たな交流手段としての役割を果たしている(※)SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、生活に密着した多くのサービスがインターネットを介して提供されるようになり、企業活動や市民生活、行政サービスなどのさまざまな場面で、情報への依存度がますます高まってきています。  今後、あらゆるモノがインターネットに接続される時代を迎えようとするなか、情報通信技術の利便性や有効性の確保とあわせて、それに伴う個人情報の保護や情報セキュリティの強化、情報格差の解消などに配慮した、安全で安心な高度情報化社会の構築が求められています。   ※SNS:会員制のウェブサイト上で職業・趣味・写真・文章などを公開し、会員同士で交流できる機能を提供するサービス。 地球環境保全に対する取組の深化  20世紀の経済的な豊かさを支えてきた、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会システムは、地球温暖化・オゾン層の破壊・酸性雨などさまざまな環境問題を生み出しました。また、東日本大震災を契機として、原子力依存度の低減や再生可能エネルギーの最大限の導入などを焦点にした電源構成についての議論が活発に行われ、新しいエネルギーへの転換が模索されています。  こうした時代背景のなかで、温室効果ガスの削減など地球環境問題の解決に向けた取組を市民、事業者等と連携し着実に実行するとともに、環境負荷の少ない次世代のエネルギーの活用に向けた取組が求められています。 地方分権改革の進展  国においては、明治以来の中央集権体質から脱却し、国と地方との関係を上下・主従の関係から対等・協力の新しい関係に転換するという理念のもとで、地方分権改革が推進されてきました。その結果、これまで機関委任事務制度の廃止や義務付け・枠付けの見直しなどの取組が行われてきており、今後、さらなる権限移譲、規制緩和などを推進するため、地方からの提案の最大限の実現を図るなど、地方の発意に根ざした改革を推進することとしています。  これからの基礎自治体においては、住民やNPOなど多様性に富んだ地域の主体と連携・協働することにより、大分市が全体として活性化するなかで、それぞれの地域における実情や特性に応じて、自らの発想により、個性を生かし自立したまちづくりを行うことが求められています。 行財政改革への要請  わが国の財政状況は、債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおもさらなる累増が見込まれるなど、依然として危機的な状況にあります。そのため、人口減少・高齢化の一層の進展が見込まれるなかで、こうした状況を脱却し、次世代への責任の視点に立って改革を進め、社会保障制度を持続可能なものとし、財政を健全化することが強く求められています。  本市においても、今後、厳しい財政状況の継続が見込まれるなか、新たな行政課題やますます多様化・複雑化する市民ニーズに的確に対応し、市民福祉の向上を実現するため、不断の行財政改革の実行による効率的な行政運営を行っていく必要があります。 多様な主体との連携の推進  さまざまな課題や住民ニーズに対して、国、県や周辺自治体、大学等の多様な主体と連携した広域的な取組を進めることは、行政コストの抑制を含めた相乗効果が得られ、さらなる住民サービスの充実に寄与するものと期待されています。  少子高齢・人口減少社会が進展するなか、本市は、県都として県全体の活性化や経済成長のけん引を担う役割からも、高次の都市機能の集積・強化を図り、県や周辺自治体はもとより、大学や民間などあらゆる主体との相互の特徴を生かした連携を図ることにより、これまで以上に生活関連機能サービスをはじめとする行政サービスを効果的・効率的に提供することが求められています。 (※)グローバル化の進展  情報通信技術の急速な進歩と相まって、企業の国際的な競争の激化、外国人旅行者の増加による(※)インバウンド需要の高まりなど、社会経済活動のグローバル化が拡大しており、世界経済の動向が直接、地域経済に影響を及ぼす時代になっています。  こうしたなか、世界的な競争と共生が進む現代社会で、国際感覚を持ち、広い視野に立って考え、活躍できる人材の育成が重要となっています。また、本市の知名度向上による地域経済活性化を図る観点から、あらゆる機会を通して、本市が誇る産品などの地域資源や多種多様な観光資源を含めた魅力を、世界に向けて積極的に情報発信するなど、その個性と特徴を生かした国際化を進めることが求められています。   ※グローバル化:人の往来、貿易、金融、サービスが地球規模に広がり、個人、企業、団体などさまざまな主体が海外に広く合理的な選択を求めて行動しようとすることから、地理的に広範な市場やネットワークが進展すること。また、個々の立場がその動きに影響を受けること。   ※インバウンド:外から入ってくる旅行。一般的に訪日外国人旅行を指す。海外旅行はアウトバウンドという。 第5 構想の前提となる都市の枠組み 1 将来の人口の予想  日本が世界に先駆けて「人口減少・超高齢社会」を迎えるなか、国は日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(長期ビジョン)」を閣議決定しました。  本市においても、これから迎える人口減少社会に対応するため、「大分市人口ビジョン」を策定し、本市の人口の現状と将来展望を示しています。  基本構想の目標年度である2024(平成36)年度の将来人口は、この「大分市人口ビジョン」より477,900人と想定します。 2 今後の土地利用の方向  本市の土地利用は、市街地においては、新産業都市建設の進展に伴い、農地や山林等を生かした自然的な土地利用から住宅・店舗・工業用地等を主体とした都市的な土地利用への転換が大幅に進められてきました。  しかし、社会の成熟化や人口減少社会の到来などの変化に対応し、中心市街地の空洞化等の課題を解決していくため、都市的な土地利用と自然的な土地利用との調和に配慮しなければなりません。したがって、都市的な土地利用がなされている土地については、極力その土地の有効利用を促進するとともに、自然的な土地利用がなされている土地については、自然環境を保全することを原則とし、都市的な土地利用に転換する場合は、周辺の自然環境や土地条件に与える影響等を勘案する必要があります。  また、山間部等、過疎化の進む地域においては、生活基盤を整備し、地域の活性化を図ることが求められており、地域の特性に応じた土地利用を進めなければなりません。  市域の均衡ある発展と快適で魅力ある都市環境の創造を目指し、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件にも配慮しながら総合的かつ計画的な土地利用を推進していく必要があります。 3 大分市の担うべき地位と果たすべき役割  本市は、古代より東九州の要地として、地理的にも歴史的にも重要な役割を担ってきました。さらに戦後の高度経済成長期以降、新産業都市の建設を機軸に幅広い産業が展開され、飛躍的な成長を遂げてきました。  従来から九州と関西・四国地方を結ぶ海上交通の拠点としての役割を担ってきましたが、近年の東九州自動車道の開通により、九州各都市とを結ぶ交通結節点としての役割はさらに高まってきており、九州の中核都市として確たる地位を占めるに至っています。  また、政治、経済のみならず情報、交通、流通、教育、文化、福祉、医療などさまざまな都市機能が集積された拠点都市として広域的に見ても主導的な役割を果たしています。  今後、人口減少・少子高齢化の進展、ゆとりと豊かさを求める成熟した社会の到来、さらに進む高速交通網の整備や国際化、高度情報化に伴う都市間競争の激化と交流の拡大、経済圏・生活圏の拡大などさまざまな時代の流れのなかで、ますますこうした地位と役割にふさわしいまちづくりが求められています。  本市としては、こうした諸情勢を踏まえ、周辺自治体との連携、役割分担のなかで、市民の創意と英知を結集し、高次の都市機能の拡充を図り、広域行政を展望した拠点都市として、県都として、さらに、アジア太平洋地域の中で拠点性を発揮できる都市として先導的な役割を果たしていく必要があります。 第6 めざすまちの姿(都市像)  ―未来の大分市がどのようなまちになるか―それは、わたしたち大分市民一人ひとりの、自分のまちへの思いの結晶であり、同時に、今を生きるわたしたちの思いを次の世代に引き継ぎながら、将来の夢の実現に向けてともに考え行動し続けるなかで見えてくるものです。  理想とする未来の大分市に思いを馳せ、個性のある、活力に満ちたまちを思い描くとき、わたしたち大分市民が共有するまちのイメージとして「未来へのキーワード」が浮かんできます。 【未来へのキーワード】 「はぐくむ」 〜市民一人ひとりの夢が実現できるまち〜  生産年齢人口の減少が進むなか、大分市に「住みたい」「住んでよかった」と思えるためには、特に、若者や子育て世代の人々が、育児や仕事などを行いながら、より高い専門的知識や能力を身につけるなど、「自己実現」できる環境を築いていくことが重要となっています。  市民一人ひとりの「自己実現」が可能な社会をつくり、すべての市民が自分の夢をはぐくみ、その実現に向けていきいきと暮らすことができるまちづくりを進めていく必要があります。 「つくる」 〜個性と魅力あふれる創造性豊かなまち〜  市民と行政が一体となって、多彩で多様な文化・芸術のさらなる振興を図るとともに、さまざまな生活シーンに文化・芸術の有するパワーを最大限に生かすことで、このまちに住むことを誇りに思えるまちづくりを進めていくことが重要となっています。  大分市のこれまでの歴史や、今も九州一の製造品出荷額を誇り、日本有数の産業集積都市として発展を続けている特長を生かしながら、文化・芸術などが有する創造性を地域振興や産業振興に領域横断的に活用することにより、文化、社会、経済など多方面に相乗効果を生み出し、まちの新たな魅力の創出へとつなげる「創造都市」としてのまちづくりを進めていく必要があります。 「つながる」 〜安全・安心な暮らしを実感できるまち〜  だれもが安全・安心を実感できる暮らしやすい地域社会の実現に向け、人と人とのつながり、地域と地域とのつながりなど、今後さまざまな場面での「つながり」を市民が主体となって築いていく必要があり、行政がそのための土台づくりやサポートを積極的に行うことが重要となっています。  また、県都大分市として、県や周辺の市町村と連携を図りながら、継続的、安定的な行政サービスを提供し、活力ある社会経済を維持し、住民が安心して快適な暮らしを営んでいけるまちづくりを進めていく必要があります。 「ひろがる」 〜世界に広がる交流拠点となるまち〜  大分市は、九州各都市を結ぶ鉄道3線をはじめ、九州の循環型高速道路体系の一翼を担う東九州自動車道・大分自動車道などの陸上交通と、本州・四国地方を結ぶ国内航路やアジア地域を中心に世界各国の港を結ぶ外国貿易航路などの海上交通が結節する拠点性を有しています。  こうした地理的優位性を生かしながら、国内外の人・モノ・情報の流れを呼び込み、そこから創出されたまちの魅力を発信する交流拠点として、より戦略的なまちづくりが重要となっています。  また、大分市の拠点性を地域間交流に生かすことにより、産業・経済面などあらゆる分野での効果を生み出し、日本全体、ひいてはアジア太平洋地域の発展に寄与していく必要があります。  これまで先人から受け継いできたまちの個性や特性を守り育てながら、市民一人ひとりの幸せな暮らしの実現に向けて、私たち大分市民が、この4つをまちづくりのキーワードとして、ともに抱く新しい時代にふさわしいまちの姿への思いを一つにしていく必要があります。  だれもが将来の夢をはぐくみ、その夢の実現に向けて生きがいを持ち、幸福を実感しながら暮らしていくことができるまちは、ひともまちも輝き、その輝きが大分市の未来へとつながっていきます。夢の実現に向かうひと・まちの活力は、大分市の個性を磨き上げ、特色のある新たな魅力を創出し、市民が愛着と誇りを持てる創造性豊かなまちへと発展を遂げる原動力となり、こうして創られた魅力を、多くの交流を通して世界に向かって広く発信していくことで、まちの新たな価値を生み出し、さらなる輝きを放つまちへと成長していきます。  生きがいを感じ幸せに満ちたたくさんの明るい笑顔が輝き、ひと・まちの夢と魅力があふれる、輝かしい未来を創造する都市を築いていく、それが私たち大分市民が抱く「めざすまちの姿」です。  ここに、市民と行政が共有する大分市のめざすまちの姿(都市像)を掲げ、その実現に向けて、市民主体のまちづくりを進めていきます。 【めざすまちの姿(都市像)】  笑顔が輝き 夢と魅力あふれる 未来創造都市 第7 基本的な政策  めざすまちの姿(都市像)の実現を目指し、6つの「基本的な政策」を掲げ、それに沿った各種施策を展開することとします。 1 健やかでいきいきと暮らせるあたたかさあふれるまちづくり(市民福祉の向上)  市民一人ひとりが、人権を尊重し、互いに認め合い、だれもが住み慣れた地域で生きがいを持って、健やかでいきいきと安心して暮らしていける地域社会をつくります。  また、安心して子どもを産み育てることができる環境を整え、社会全体で子どもの健やかな成長を支えるまちづくりを進めます。 2 豊かな心とたくましく生きる力をはぐくむまちづくり(教育・文化の振興)  未来を担う子どもたちの豊かな人間性や社会性をはぐくむとともに、個性を尊重し、創造性を伸ばすことによって、一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、変化の激しい社会をたくましく生きる力をはぐくみます。  また、生涯にわたって主体的に学び、文化・芸術やスポーツに親しむなど、だれもが潤いや生きる喜びを実感でき、ふるさとに誇りの持てるまちづくりを進めます。 3 安全・安心を身近に実感できるまちづくり(防災安全の確保)  地震や津波、台風などの自然災害はもとより、テロや武力攻撃事態、さらには交通事故や犯罪など、日常生活を脅かすあらゆる危機事象を想定し、市民、地域、行政及び関係機関がそれぞれの役割分担(自助・共助・公助)のもとに連携・協働して、被害を未然に防止し、または最小限に抑えることができるよう対策を着実に推進し、安全・安心を身近に実感できるまちづくりを進めます。 4 にぎわいと活力あふれる豊かなまちづくり(産業の振興)  経済を活性化し、企業の経営基盤の強化、農林水産物や工業製品をはじめとする産品の供給体制の充実など、地域の発展を支える各種産業の機能強化を図ります。  また、関係機関との連携を強化し、住む人や訪れる人たちにとっての新たな魅力を創出することでにぎわいと活力に満ちた豊かなまちづくりを進めます。 5 将来にわたって持続可能な魅力あふれるまちづくり(都市基盤の形成)  潤いや美しさ、豊かさなどで満たされるバランスのとれた都市の創造を目指して、各地域の現況や特性を生かした生活サービス機能の充実と集約により、コンパクトで暮らしやすいまちづくりを進めます。  また、日常生活での快適性・利便性の向上を図り、将来にわたって住み慣れた地域で安心して暮らせる持続可能な魅力あるまちづくりを進めます。 6 自然と共生する潤い豊かなまちづくり(環境の保全)  清潔で安全に暮らせる快適な生活環境を構築するため、市民、事業者、行政が連携して、環境に優しい循環型社会を形成するとともに、地球的規模の環境問題に取り組みます。  また、豊かな自然を守りながら、魅力あふれる環境を次世代に引き継ぐため、生物や自然に対する理解を深め、人と自然が共生する潤い豊かな都市を目指します。